先日『猫絵の姫君ー戊辰太平記ー』をご紹介いただきました、

小栗さくら様の『余烈』(講談社)のご紹介です。

 

 

本作は「波紋」「恭順」「誓約」「碧海」の4つの短編から構成されています。

まず、師である赤松小三郎を斬る「人斬り半次郎」こと、

中村半次郎(桐野利秋)を描いた「波紋」

 

そして、武市半平太と主君・山内容堂の対話の果てに、

命の終わりの刻を迎える「誓約」

私もこの容堂像はかなり近いものを持っています。

起因しているものは吉田東洋の暗殺事件。武市にとって容堂は敬愛する主君であり、

希望であったが、容堂は吉田こそが「志」であった。

そこに武市と容堂の終末がありました。

 

なお、私は武市に絵心があったことは知りませんでした。

 

 

そして小栗忠順と継子の又一の「恭順」、土方歳三と立川主税の「碧海」

帯文にもありますが、どの作品も長編小説の最終章を読んでいるような、

そんな感覚になります。

「ここに至るまでの物語」に自然と興味を掻き立てられます。

 

 

そして私が推したいのは土方と小栗の二編です。

 

私も『燃えよ剣』から歴史小説に入った人間でして、

これまで土方が登場する作品はいくつも読んでいます。

小説、漫画、映像作品と諸々ですが。

といいますか、この度は自分でも書いていますw

 

 

「碧海」は主人公は土方の傍らにあり、

北の大地で戦死を遂げた時にもっとも近くにいた男である立川主税。

新選組の終焉を見届け、明治を生きてその菩提を弔い続けた男の目から、

土方歳三が語られています。

仙台公(伊達慶邦)から拝領した、水色の下げ緒も登場しています。

これは個人的に好きなエピソード。

主税の訪問を受けた佐藤家の面々とのやり取りは好きな場面です。

 

 

そして、「恭順」は小栗家の話です。

私は描くことが出来なかったですが「権田村に下がった後の小栗家」の物語です。

主人公というべきは小栗忠順の嗣子・小栗又一(忠道)

小栗には男子がおらず、駒井家から養子に入ったために、

運命が大きく変わることになる人物です。

 

忠順の後継になるはずだった21歳の才気ある若者が、

養父同様に捕えられて、無辜の内に死を遂げる様が描かれています。

地元の群馬でも忠順の子はあまり知られていないので、

はじめて知るという方も多いかも知れません。

仮に小栗父子が明治の世に生きていたら・・・

誰もがそう思い描くと思います。

権田村で人材を育て続けたのか、政府に請われたのか・・・

それは想像するしかありませんが。

 

なお、小栗の妻の道子のこの時、妊娠8ヶ月の身重で、

権田村から逃亡しています。

権田村から六合村を経て新潟の十日町に逃げたというから、

身重でとんでもない山道です。一応、古道ではありますが・・・

官軍から逃げる途上で、道子は女子(国子)を産んでいます。

この子は後に、大隈重信、綾子の夫妻が養女にしています。

 

 

私は「恭順」が一番好きですが、いずれも珠玉の四編であり素晴らしい作品です。

是非、ご一読下さい。

 

 

なお、後ろは造船所つながりで戦艦大和(自作プラモ)

大和は呉だけど、それはそれとしてw

 

 

 

智本光隆