前回の黒いセーラー服で思い出した恐怖体験
衣替えで夏の制服に替わった7月の或る日
(夏服はセーラーではなく、白い半袖ブラウスと薄い生地のひだスカート)
仲よしの友達と部活を休んで
自転車を飛ばして市の観光地の岬へサイクリング
瀬戸内海を見下ろす素晴らしい景色が広がって
観光客のほとんどがバスでやって来る
私達は初めてボートに乗って沖へ漕ぎだした
二人ともボートを漕いだ経験はなかったけど
恋人同士が乗っているのを見た事があるから
あんなの誰でも出来る!
ボートも……多分大丈夫だろう!と軽い気持ちで
沖へ向かって先に私が漕ぎだした
私は小さい頃から家に父の釣り用の木造の船があって
日曜日や夏休みは父と二人で釣りに出掛け
櫓を漕ぐのは私の役目で
小さな身体で船を回す時は、勢い余って手が滑り、船の向こう側へドボン
私が泳ぎが達者な事を知っている父は、私が上がってくるまで助けようとしなかった
部活をサボった女子高生二人
ボートはベタ凪の海面を面白いように進み
箸が転んでもおかしい年頃の二人はお喋りが楽しくて
どんどん沖へ出ている事に気付かなかった
海苔養殖場のすぐ近くまで来て振り返ると
浜辺が遠くに見えて、急に怖くなり
そろそろ引き返そうか…とボートの向きを変えようとした時
今度は私が漕ぐわ~!と
友達がいきなり立ち上がった瞬間、ボートはバランスを失い
ゴロン!と転覆、私達は瀬戸内海へドボンと投げ出された
慌ててボートに捉まろうとしても
ボートは赤い腹をみせてどんどん流れてしまい
二人とも海辺で育って泳ぎは自信があったけど
静かに離れていくボートを追いかけるより
すぐ近くの海苔養殖場の海苔ヒビまで泳いだ方がいい…
目の前だと思っていたけど
着衣のままでは普段のようには泳げない
悪戦苦闘しながらやっと海苔ヒビに辿り着いた
ようやくヒビに捉まって
どうしよう。。。
そろそろ夕暮れ…船が通るのを待つしかない
空も暗くなり始めて、水中の足はもう限界。。。
もうダメかなぁ。。。私達こんな所で死ぬんだね
乙女チックな事を言ってる場合じゃない。。。
部活休んだ罰だね…などと言っていた時
運よく海苔ヒビの見回りに来た栽培場のおじさんの船が来た
ヒビに貼り付いてる私達を見て、おじさんは仰天していました
天の助けおじさんの船で無事に浜へ帰ることができました
もし友達が泳げなかったら、私は彼女を助けられただろうか
もし養殖場が近くに無かったら私達は完全に
もしおじさんが見回りに来なかったら…
もし冬の重いセーラー服だったら泳げただろうか
翌日、登校すると早速の呼び出し…2度目の校長室
シッカリ怒られました
60年も前の出来事ですが、今思い出しても背中がゾッとします
若いって怖いですねぇ…
あれ以来、公園の池のスワンボートにも乗れない
小さい子供じゃなくても
家族の知らない所で危険な目にあっている事があります
少し前にテレビで着衣水泳の事を言っていたけど
そんな状況に出遭う事は少なくても
知識として知っていた方がいいですね
大雨と雹で花が殆ど落ちたのに
残っていた小さな蕾が実を付けています
二階のベランダから見ると、樹のてっぺんにもたくさん実がついていました