きっかけはちょっとした違和感だった。
2013年4月、生後19日目。
沐浴をしようとさくらのおむつを外したところ、ちょうどうんちの最中。
あわわわわ…と慌てて閉じるも、
かすかな違和感がありまた開けてみる。
クリーム色…?
レモンイエロー…?
なんだかいつも見ている濃い黄色の便ではないようだった。
気のせいかな?と流しかけたが、後から来た妹が
「あれ?うんちの色薄くない?」と話しかけてきたので
ああやはり客観的に見ても薄いんだ、と危機感をもつ。
確か母子手帳に「うんちの色に注意しましょう――
色の薄い便は胆道閉鎖症など病気の疑いがあります」みたいな
情報があったな、ということが頭をかすめた。
その時は「胆道閉鎖症」という言葉しか知らず、
病状等は知らなかった。
その沐浴ではちょっとしたアクシデントがあり、ごく軽い火傷を
負わせてしまったので、念のため市内の総合病院へ連絡した。
時刻は16:50、今からですと救急にお越しくださいとのこと。
火傷は案の定大したことはなかった。(良かった)
白っぽい便が出たと、現物持参のうえ相談したものの
もう金曜の夕方なので検査はできない、一過性のこともあるので
土日経過観察して月曜におさまってなかったらまた来てくださいと
そっけなく回答された。
最初から胆道閉鎖症の可能性を視野に入れて小児科医に
診てほしいと お願いしたのに、気合が空回りという形になった。
その日はそれ以上どうしようもなく帰宅する。
ネットで「胆道閉鎖症」を検索……。
出るわ出るわ、ネガティブ情報の数々。
原因不明の難病。
早期発見がとても重要。
一日も早い診断確定と外科的手術(葛西術)が必要。
無治療なら2歳になる前に死亡する。
葛西術を行ったとしても、60%以上が肝移植の適用となる…。
「現代において、手術をしても治らない病気ってあるんだ」
それが第一印象だった。
リアルなこととして捉えられず、思考停止状態になる。
そして、治まる気配のない、淡い色調の便。
母子手帳に綴じこまれた便色カードに食い入るようにして
見比べる。
2番か…よくて3番。
「1~3番の便色は、胆道閉鎖症の疑いがあります」
アリジゴクの巣のごとく、床に吸い込まれていく感覚が襲った。
いやまさか、そんなはずがない。
いやじゃあ、この便の色はなんなんだ?
何も原因がなくてこんな色のはずはない。
それならさくらは難病なのか?
産まれて間もない、この小さくて元気で輝いている生命が。
さくらは、おだやかな顔ですーすー寝息を立てていた。