チベット医学の真髄』から転載

ラルフ・クイン・フォード著 上馬塲和夫監修 発行元 ガイアブックス

 

■舌診

 舌診は紀元前1世紀の中国殷王朝の時代からおこなわれていた歴史ある診断法です。熟練の医師や治療家にとって、舌は体とその機能をうかがい知る窓であり、特別な訓練を受けていない人も自分の舌を毎朝チェックすれば、現在の健康状態を知る手がかりが得られます。舌が不健康そうに見えるときは、資格をもつチベット医のもとを訪れて原因を突き止めてもらうとよいでしょう。

●病人の舌の状態

 19世紀の終わりまで、西洋の医師にとって舌診はオ―ソドックな診断法でした。舌の各部分が体内の臓器と結びついており、舌にその状態が表れると考えられていたのです。チベット医学で舌の状態を調べるのも、舌の各部分が体の部位に呼応しているという考えにもとづいています。診断材料には舌の表面にを覆っている舌苔も含まれます。舌苔は消化の過程で生じる付着物であり、正式な訓練を受けた医師なら患者の消化器の状態を舌苔から判断することができます。ルン(風)が優勢な患者の舌は赤く、乾いており、両端が盛り上がっています。ティーパ(粘液)病の人の舌は黄色い舌苔で覆われているのが特徴です。ペーケン(熱)病の人の舌は青白く、舌苔は白くて粘り気があります。

●診断のしかた

 チベット医の診断で舌診が最初におこなわれることはなく、たいていの場合は脈や尿の診断から判断したことを裏づける手段として用いられます。チベット医学では舌を体の内部を表した地図と見なします。医師が患者の舌を調べるときには、まず三つのニェパ(ルン・ティーパ・ベーケン)のバランスを表すサインを、次に消化器系の状態と食物からのミネラル吸収の効率を示すサインを探します。ストレスの印が舌にあらわれていないチェックすることもあります。

●現代医学における舌診

 12,000人の患者を対象に舌の状態を記録した研究グループが、ガン患者の舌の色と舌苔には健康な人に比べて著しい違いが見られることを1987年の『中国腫瘍学会報』に報告しました。一方ピッツバーグ大学では、舌診を利用して結腸ガンを早期に発見する研究がすすめられています。この研究チームは患者の舌のコンピューター画像を使って初期のガンを特定しょうとしているのです。

「舌診はたいていの場合、脈や尿の診断の結果を確認する手段としてもちいられます」

 
チベット医学は舌を体の地図として扱い、各区分に特定の臓器の状態が反映されていると考えます。たとえば舌の先は心臓と肺に結びついており、両端は左右とも肝臓と胆嚢を表し、中央部は脾臓と胃、一番奥の部分は腎臓、膀胱、腸を反映しています。

転載者からの一言

迷走神経は舌の味覚の神経や運動神経も司っています。内臓の病気の変化が舌に現れて来るということは当然のことでしょうね。