チベット医学の真髄』から転載

ラルフ・クイン・フォード著 上馬塲和夫監修 発行元 ガイアブックス

 

■診断法

チベット医は何世紀ものあいだ、さまざまな要素を盛り込んだ診断法を世界の屋根で実施してきました。比較的シンプルで費用のかからない方法にもかかわらず、的確な診断を下すことができるのはなぜなのか、近年では欧米の医師たちがそのメカニズムの解明に取り組んでいます。研究結果を欧米で再現し、従来の医薬の副作用を軽減するため、チベットに古くから伝わる脈診と尿診の手法が現代的な形で紹介されています。それ以外の占断などの診断法は欧米人の考え方ではほとんど理解できません。チベット医学を知る事は、悟りを目指す深遠な体系を理解することに他ならないのです。

○尿診

 チベット医は患者の尿に表れる体内の代謝のプロセスをことごとく見て取ります。尿の色、色感、質感、臭いから、病気や障害の兆候である三体液(ルン、ペーケンティーパ粘液)のバランスの乱れを見抜くことができるのです。医師は尿のサンプルを採り、尿の性質を解消ないしは変化させるのに適した薬草や薬剤を探します。このようなスクリーニングを通じて、どの薬を処方するのがベストか判断します。

 

レチュン・リンポチェ師は著書『チベット医学』のなかで、尿診の理論を説明するのに『ギュー・シ(全4巻の医学タントラ)』の記述を引用しています。

「食物はペーケン熱によって分解され、次にティーパ粘液によって消化され、ルン風が栄養素を吸収する。残った老廃物は腸に運ばれて液体と固体に分けられ、液体部分は膀胱に送られる。一方、消化吸収された液状の滋養分は胃から肝臓へと運ばれ、血液になる」

●診断のしかた

 夜が明けたばかりの早朝、その日最初に出た尿を診ます。それ以前の時間帯の尿には、消化の過程で生じる老廃物が混ざっているからです。尿をかき混ぜるのに先の割れた竹の棒を使うのが、昔ながらのやり方です。四部医典によれば、健康な人の尿は麦わらのようなこがね色で、クリームのような匂いがし、気泡の大きさは中程度だといいます。ニェパルンペーケンディーパ)のどれか一つが過剰な場合は、尿の色、臭い、質感に異変が現れます。そのような異変を診断と治療の目安にするのです。

●病人の尿の特徴

l  ルン病の尿  臭いはなく、湯気がほとんど立たず、かき混ぜると大きな泡が出ます。尿の色がかすかに青みを帯びていたら、ルンの過剰により体内のバランスが乱れているしるしです。

l  ティーパ病の尿  臭いが強く、色は濃い黄色からオレンジ色です。ティーパが優勢な尿のサンプルをしばらくそのままにしておくと、尿中に溶けている水溶性のタンパク質(アルブミン)が凝固して浮いてきます。これを「クヤ」といい、綿をちぎったような形をしています。尿の底、中間、表面の」どこかに浮かんでいるかによって、体内でバランスが乱れている部位が分かります。

l  ベーケン病の尿  ベーケンが優勢な場合、尿の色は灰色がかっています。青みを帯びた細かい泡がたくさん立って、なかなか消えません。尿が虹色をしていたら毒物にやられているしるしです。

l  沈殿物  沈殿物をつまみ上げられそうみ見える場合、それはルンの病気の兆候です。上に浮いていたなら、心臓病を示します。底に沈んでいたら腎臓の病気です。尿の表面に膜が張っているのは腫瘍の兆候です。

メワによる尿診

 容器に入れた尿を上から観察し、「メワ」という亀甲を模した九つのマス目(亀ト九宮八掛図)にあてはめて診断します。このマス目はチベット占星術で用いられるものと同じです。九つのマス目は神々、人間、悪霊、火葬場、家屋、自然環境、祖先、患者の魂、子孫に相当し、患者に及ぼされる星の作用力がそのどれかに現れます。どのような作用力が表れるにせよ、宗教儀礼を通じて「解毒」しなければなりません。メワを使った尿診はチベット医学の診断法のなかでも理解、習得するのは相当難しいとされています。

●現代医学における尿診

 チベット医学では患者の健康状態を説明するのに尿診から得た情報を用いますが、西洋医学では最近になるまでこの情報源がかえりみられることはほとんどありませんでした。とはいえ、尿を八つの要素(ウロビリノーゲン、タンパク質、pH値、血液、グルコース、ケトン、ビリルビン、尿比重)から分析する検査は以前から実施されており、尿検査で血液などが検出された場合は病気が潜在するサインと見なします。

 また、一人ひとりの患者に合った薬を処方するため、尿検査の結果を活用する動きも出ています。患者の尿を検査すれば、特定の薬物に対する耐性が明らかになります。薬物への耐性は遺伝的に決まっており腸バクテリアをはじめとする体内の生化学的要因に左右されるからです。インベリアル・カレッジ・ロンドンの

ジェレミー・ニコルソン教授らは、排泄された老廃物(体内の代謝作用を通じて自然に生成される微小な分子)を分析する尿検査を開発しています。その結果、患者の尿に含まれる老廃物の組成にその人の遺伝的・生化学的な特徴が反映されていることが分かりました。チベット医学で何世紀も前から知られていたことを、西洋医学の観点から証明したというわけです。

 薬剤による中毒症状の予防に尿の老廃物の分析結果を活用している研究者たちは、新薬の臨床試験でもこの手法が従来のやり方より優れていることを明らかにしました。この知見を活用すれば、チベット医学の原理に即した体質検査法の開発に向けて、小さな一歩を踏み出すことになるでしょう。

 チベット医学の教えでは、尿の中に排出される老廃物から病気を早期に発見することができるといいます。たとえばイタリアの研究者グループは、尿検査でテロメア酵素(ガン細胞に高濃度で見られる)を調べれば90%の確率で膀胱ガンを発見できることを突き止めました。痛みや危険を伴わず、患者への負担が少ない検査法であり、膀胱ガンの治療に大いに役立っています。

転載者からの一言

病院にいけば、尿や血液を採血します。採血は針を刺しますので痛いです。重症になればなるほど採血が多くなります。更に重症になると動脈からも血液を採取されます。末期になって、死にそうな人からでも容赦なく採血をされます。他に方法が無いものかと、いつも仕事をしていて思っていました。他に方法があるのです。しかしやらないのです、お金が循環しない物はやらないのです。それが資本主義社会の宿命なのです。

マッサージにしてもそうです。こんなに気持ちが良くて、身体に優しい療法であるにもかかわらず、病院では浮腫みがあれば、機械をつかってマッサージをしたり、弾性ストッキングの着用を勧めます。無料である手を使ってのマッサージ方法はやらせません。やると医師や上司が怒ります。浮腫みには手のマッサージが一番良いのに、それをさせません。機械やストッキングであれば患者にお金を請求できますが、手のマッサージはそれが出来ないのです。

まだまだ沢山良い方法が有りますが、システムに逆らえません。国民の多勢の意識が変わればシステムも変わります。しかし、一番の悪者は拝金主義の社会です。看護も介護も拝金主義になってしまいました。ネット社会をみても、いかにお金を稼ぐかです。家庭もお金に振り回されています。

この世はまだまだ人間の意識は獣です。奪い合いの世界です。でも、そろそろ獣の皮を脱皮する時期が来ているようにも思われます。