中央競馬初戦での10着という結果は、大和一馬に現実の厳しさを突きつけた。地方競馬での勝利がわずかな望みを与えたかと思えば、それを打ち砕くような圧倒的な差。
「正直、この馬じゃ無理だろう」
あるベテラン馬主の言葉が耳を刺した。だが、諦めるわけにはいかなかった。フェアリースターにかけた想いだけでなく、ここで負ければ、大和自身の信念が揺らぐことになる。
しかし、その矢先、フェアリースターが脚を痛めた。怪我の程度は軽くない。長期休養を余儀なくされ、中央競馬に再挑戦するどころか、現役を続けることすら危うかった。
「一馬さん、この馬はもう限界じゃないですか?」
調教師の村山でさえ、慎重な口調で問いかける。だが、大和は首を振った。
「彼女をここで終わらせるなんてできません。もう一度、立ち上がらせます」
怪我の療養中、大和は村山や騎手の小倉とともに戦略を見直すことにした。フェアリースターの強みは末脚にあるが、序盤のスピードや馬群に対する耐性が課題だ。さらに、彼女の体格や気質に合ったレース距離を探すため、データを徹底的に分析した。
「長距離戦なら、この子のスタミナを活かせるかもしれない」
村山の提案で、新しいトレーニングプランが始まった。負荷を抑えつつ持久力を鍛えるメニューに加え、他馬と並走する練習で精神面の強化も図った。
フェアリースターは少しずつ回復し、調教を再開する頃には、以前よりも落ち着きと集中力を見せるようになっていた。
休養明けのレース。地方競馬の2400メートル戦だった。フェアリースターは最初のコーナーで中団につけ、レース後半で徐々に順位を上げていった。そして最後の直線、いつもの末脚が炸裂し、一気に差し切って勝利を収めた。
ゴール後、大和は感慨深い思いで彼女の走りを見つめた。
「おかえり、フェアリー。やっぱりお前は最高だ」
この勝利を皮切りに、フェアリースターは地方競馬で再び連勝し、ついに中央競馬のオープンクラスへ挑戦する資格を得た。
中央競馬の2戦目、オープン戦でもフェアリースターは健闘した。結果は惜しくも4着だったが、大和たちの努力は確実に形になりつつあった。
「次こそ、やれる」
その言葉を胸に、大和たちはさらなる高みを目指した。