ずいぶん放置してしまいました……皆さまお元気でしょうか、私はまあまあです。あ、来月結婚することになりました。


それはそうと、本です、今年1番の予感! すごいの読んでしまった!!



多崎礼『煌夜祭』(中公文庫)


たさき、れい。こうやさい。デビュー作だそうです。

冬至の夕暮れ、島主屋敷の庭で「語り部」たちの祭りが始まる。夜を徹して、それぞれの知る物語を語ってゆく祭り。海を隔てた島の伝説、森の老婆の話、そして、魔物の話。

「伝説」とか「魔物」という時点でだいぶファンタジーの要素が強そうに思えますが、骨格はむしろミステリに近い気がします。一見ばらばらに存在していた物語がやがて一つの方向を指し、「彼ら」の物語が見えてくるあたり、探偵が出来事を整理して真相を語る過程によく似ています。


そういえば「ものがたり」という言葉がそもそも、「もの(のけ)について語る」「もの(のけ)に憑かれて語る」「もの(のけ)が語る」ことを指すんじゃなかったか。その意味で、この作品はおそろしく正統的な「物語の物語」といえるかもしれません。


ファンタジーっぽく味つけされているけれど、(魔物への)差別や権力争い、罪、愛など、ここで語り部たちが語っているのは「生きること」そのもの、生きることの苦しさとそれでも生きようとする意味であって、目が離せなくなりました。久々に「ああっ、残りがもう数ページしかないよっ」と惜しみながら読みました。


また、読解とか解釈といったアプローチじゃなくても、伏線が回収されていく快感だとか、魔物の年をとらないきれいな容貌、強い友情と平和な世界を実現したいと望む情熱などなど、楽しめるポイントがたくさんあるので本当におすすめ。


「生きなさい。その名に恥じないように」



煌夜祭 (中公文庫)/多崎 礼
¥620
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気温が急激に下がって、大雨や台風など心配なことも尽きませんが、皆さまどうぞご自愛くださいね。