加納朋子『少年少女飛行倶楽部』(文春文庫)


文庫化! 待ってたよ!


中学校入学早々、幼なじみに引きずられるように入部してしまった「飛行クラブ」。しかし創立者で部長の2年生はあんまりな変人、顧問はやる気なし、その上このクラブ、人数が少なすぎてそもそも正式な部として認められていなかった……


語り手が女子中学生ということもあってか地の文がかなり砕けた口調で進むのと、想定読者層が若めなのかカチャカチャとけっこう突飛な展開が見受けられるのとで、「いつもの加納さん」のイメージとは若干ずれますが、楽しく読めました。解説でもふれられていたように個性ゆたかな中学生たちがそれぞれ鮮やかに動くようす、こういうの読むと描写力の凄さに圧倒されます。とくに両親から期待をかけられながら野球そんなに好きじゃない男の子、球児くん。いとしい!


ただ、序盤で意地悪なキャラクターについて「お母さんがいらっしゃらない」と説明されたはずなのに後半で「良子ちゃんのお母さんにお礼言われちゃった」とあり、いったい誰にお礼を言われたんだか気になるところ。でも『コッペリア』あんなに緻密に書いた人がミスなんて考えづらいなあ。読解を間違ったかしら私。


とはいえまた「先が気になる」キャラクターたちと出会えたこと、しかも中1の春から秋の文化祭までで1冊なので続篇がないとも限らないこと(もしかしてもう書かれてる?)など、楽しみは尽きません。やはり好きなのだなあ、加納さんの作品。




少年少女飛行倶楽部 (文春文庫)/加納 朋子
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