夏休みのイベントに行ったら、300円でタロット占いをしてくれるコーナーがあった。

私は人生で一度も占いをしてもらったことがない。

この「占いバージン」にはちょっとしたプライドまで持っていた。

「私ったら女子なのにまるで占いに興味ないの」的な。

でも、50歳過ぎたらそういうのも薄れて、というか、残りの人生できる限りの経験をしなくては、もったいないかな、と。

 

こんな動機だったので

「何を占ってほしいですか?」と聞かれて、めっちゃビックリした。

 

座ったら自動的に占ってもらえると思ってたけど、そもそも、そりゃそうだ。

占ってほしいことがあって、占ってもらう、うん。

ごもっとも。

えーっと・・・何を・・・?

 

「タロット占いは半年とか一年後ぐらいの近い未来について『Yes』『No』で答えられる事柄に向いています」

 

おお。

さらにハードルが上がった。

 

占ってほしいこと。

娘・・・ダンナ・・・母親・・・自分自身・・・特にこれと言ってないなぁ。
1分くらい、ホンマに「う~ん、う~ん」とマンガみたいに悩んだ。

そこで、ひらめいた。

 

「ペットのことでもいいですか?」

「もちろんです」

「18歳のオス猫がいるんですが、衰えが目立つんです。もう十分生きたので死ぬのは構わないんですが、苦しんだり痛い思いをしたりせずに寿命を全うしてほしいと思っています。どうでしょう、彼は安らかに旅立てるでしょうか」

 

それを聞いて占い師の女性はタロットカードを並べた。

「確かに寿命は長くないようです。周囲が心配している様子も伺えます。でも」

「でも?」

「彼は生きる気満々です」

 

もう、殴られたような衝撃。

 

私は2年ぐらい前から彼の行く末ばかりを想像して、身構えていた。

寝たきりになったら。

ヘビーな治療が必要になったら。

そのとき、私はどうすべきか。

何をどれだけ準備したらいいのか。

 

そうだよ。

目の前の彼はまだまだ食欲旺盛なのに。

すっかり筋力の弱くなった後ろ脚を引きずりながらでも階段を上がるのに。

こんなにもこんなにも生きている彼をどうして私は見えなかったのだろう。

 

それでも。

「その日」は、来る。

占いによると私の猫の最期は穏やかなものになりそうだ。

でも、まあ、考えてみれば。

「穏やかな最期」とは誰の判断になるのだろう?

 

やっぱり未来はわからないし、それでいい。

ただ。

彼の気持ちを置き去りにしてはいけないな。

そう気づかせてもらえて、よかった。