$夜明けを待つ

 単行本 

佐々 涼子 (著)

 

 

 

$解説

生と死を見つめ続けてきたノンフィクション作家の原点がここに!

私たちは10年という長い年月を、とことん「死」に向き合って生きてきた。
しかし、その果てにつかみとったのは、「死」の実相ではない。
見えたのは、ただ「生きていくこと」の意味だ。
親は死してまで、子に大切なことを教えてくれる。
(第1章「『死』が教えてくれること」より)

家族、病、看取り、移民、宗教……。
小さき声に寄り添うことで、大きなものが見えてくる。
『エンジェルフライト』『紙つなげ!』『エンド・オブ・ライフ』『ボーダー』……。
読む者の心を揺さぶる数々のノンフィクションの原点は、
佐々涼子の人生そのものにあった。
ここ10年に書き溜めてきたエッセイとルポルタージュから厳選!
著者初の作品集。

(目次より抜粋)
第1章 エッセイ

「死」が教えてくれること
夜明けのタクシー
体はぜんぶ知っている
今宵は空の旅を
命は形を変えて
この世の通路
幸福への意志
もう待たなくていい
ダイエット
ハノイの女たち
未来は未定
夜明けを待つ
痛みの戒め
柿の色
ひろちゃん
和製フォレスト・ガンプ
誰にもわからない
トンネルの中
スーツケース
梅酒
ばあばの手作り餃子
縁は異なもの

第2章 ルポルタージュ

ダブルリミテッド1 サバイバル・ジャパニーズ
ダブルリミテッド2 看取りのことば
ダブルリミテッド3 移動する子どもたち
ダブルリミテッド4 言葉は単なる道具ではない
会えない旅
禅はひとつ先の未来を予言するか
悟らない
オウム以外の人々
遅効性のくすり


佐々涼子(ささ りょうこ)
ノンフィクション作家。1968年生まれ。神奈川県出身。早稲田大学法学部卒。日本語教師を経てフリーライターに。2012年、『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』(集英社)で第10回開高健ノンフィクション賞を受賞。2014年に上梓した『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている 再生・日本製紙石巻工場』(早川書房)は、紀伊國屋書店キノベス!第1位、ダ・ヴィンチBOOK OF THE YEAR第1位、新風賞特別賞などに、2020年の『エンド・オブ・ライフ』(集英社インターナショナル)は、Yahoo!ニュース|本屋大賞2020年 ノンフィクション本大賞に輝いた。他の著書に『ボーダー 移民と難民』(集英社インターナショナル)など。

 

$読者レビューより引用・編集

佐々涼子(1968年~)氏は、早大法学部卒、専業主婦として2児を育てつつ、日本語教師等を経てライターになった、ノンフィクション作家。

2012年、『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』で開高健ノンフィクション賞、2014年、『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている 再生・日本製紙石巻工場』でダ・ヴィンチ BOOK OF THE YEAR第1位等、2020年、『エンド・オブ・ライフ』で本屋大賞ノンフィクション本大賞を受賞。
本書は、2013~22年に、日本経済新聞や雑誌各誌に掲載したエッセイ33編と、「集英社クオータリー kotoba」等の雑誌に寄稿したルポルタージュ9編をまとめた作品集である。
私はノンフィクションが好きで、これまで多数のノンフィクション作品を読んできた。

佐々さんも支持するライターのひとりで、『エンジェルフライト』、『紙つなげ!~』も読んでいる。
そして、ひと月前に行きつけの大手書店で本書を見かけたのだが、佐々さんにしては珍しいエッセイ+ルポルタージュ集だなと思いながら、購入はしなかった。

それから程なく、NHKの朝の番組の特集で、佐々さんが悪性の脳腫瘍に罹患し、余命長くないことを知り、即座に入手し、読み終えた。(尚、佐々さんが悪性脳腫瘍に罹り、残された時間が少ないことは、本書のあとがきで書いている。私は本を見るとき、大抵はあとがきから読むのだが、書店で見かけたときには、なぜかあとがきを読まなかった。)
本書に書かれているのは、作品集という性格上、様々な題材ではあるが、通底する大きいテーマはいくつかである。これまで「死」をテーマにした多くの取材をし、作品を書いてきた佐々さんが、そのときどきにどのようなことを感じ、考えていたのか。ライターになる前に日本語教師をしていた経験も踏まえて、国を跨いで生きる子ども達にとって最も大切なことは何で、そのために我々は何をするべきなのか。

そして、『紙つなげ!~』を発表した後、10年間闘病した母親を失ったこともあって、スランプに陥り、インド、バングラデシュ、フランス、タイ等の寺院を訪ね歩き、そこでどのようなことに気付いたのか等である。

ノンフィクション作家というのは、取り上げるテーマとそれを描くアングルに、作家本人の価値観や人生観が如実に反映されるものだが、佐々さんのそれには大いに共感を覚えるし、また、いくつもの新たな気付きを与えられた。
その中で、最も印象に残ったのは、ノンフィクション作家の使命について書かれた、次の一節である。
「私は震災や、事件、事故について書いている。殺人についても、終末医療についても取材をしている。世の中には、災害があり、テロがあり、戦争がある。子どもの虐待があり、貧困や、病がある。いいことも、悪いことも書くのは、いいことも悪いこともあるから書くのだ。理不尽なことは、この世に存在している。それはただそこにある。だから私は書いているにすぎないのである。しかし、私は、「それでも」世の中は決して捨てたものではないと思っている。世の中は基本的に信じるに足ると思っているし、それがなければ、こんな仕事を誰もしないのではないだろうか。私が書きたいのは、「それでも」のあとにやってくるものなのだ。」
あとがきは次のように締めくくられている。
(こどもホスピスの取材をしたときのことを振り返って)「取材をしていた時には、まだピンとこなかった。だが、その時わからなかったことも、今ならわかる。私たちは、その瞬間を生き、輝き、全力で愉しむのだ。そして満足をして帰っていく。なんと素敵な生き方だろう。私もこうだったらいい。だから、今日は私も次の約束をせず、こう言って別れることにしよう。「ああ、楽しかった」と。」
また佐々さんの書いた文章を読めることを願って。
(2024年1月了)

 

$出版社より

 

登録情報

  • 出版社 ‏ : ‎ 集英社インターナショナル (2023/11/24)
  • 発売日 ‏ : ‎ 2023/11/24
  • 言語 ‏ : ‎ 日本語
  • 単行本 ‏ : ‎ 272ページ
  • ISBN-10 ‏ : ‎ 4797674385
  • ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4797674385
  • 寸法 ‏ : ‎ 13.4 x 2.4 x 19.4 cm

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