私は辞めなかった。

経済的な理由で夫に反対され続け、「辞められなかった」と言ったほうが正しいのかもしれないが、毎日のように罵られてギリギリの精神状態の私を支えたのは、新卒で就職した私立幼稚園での経験だった。


私立幼稚園は年間休日90日ちょっと、朝早くから夜遅くまで働いても給料は手取りで15万ちょっと。待遇はあまりにも悪かったが、人間関係の風通しの良さは公立より断然上だった。


ブラックな環境のため、2、3年で人が辞める。すごい時には12名いる担任の半分が新卒、半分が2年目ということがあった。そのために、人材育成のマニュアルがあり、誰かの個人的な感情に振り回される、ということがなかった。


入職してからも、新人一人に教育担当の職員が一人付き、事務のやり方、(職員室での新人の立ち回り方)、日々の保育の進め方を丁寧に教えてくれた。

また担任を持たない学年主任もいて、お便りを書く際は、必ず文章をチェックして、保護者が不快にならないような言い回しを例示しながら丁寧に教えてくれたし、保育に補助に入る際も、やり方を押し付けるのではなく、あくまで「補助」として、たとえ新卒でも担任の立場を尊重しながら必要に応じてアドバイスをくれたりした。


そんな経験があったから公立幼稚園の指導のやり方が心底「異常」だと分かった。心を病んだB先生には「異常」な指導が当たり前だったのだと思うと、気の毒でならない。