介護施設の中でも、
徘徊しないように
鍵が閉められる場所。
そこで、
おばあちゃんに会った。
明治生まれの、98歳。
もう僕のことは
覚えていない。
何度も何度も
名前を聞かれる。
浪人をしたのに
センター試験を
マークミスした夜。
おばあちゃんから
手紙をもらった。
「元気出しなさいね。
これ、もらってくださいね。
おばあちゃんの気持ちです。」
手紙と小さなお守りと。
いろいろと気を遣って、
寝る前にそっと、
手を握って渡してくれた。
指が震えてるせいか
文字が読みづらい。
嬉しすぎて泣いた。
今でも鮮烈に覚えてる。
ばあちゃん子だったから、
胸が張り裂けるくらいに
切なくて苦しくて嬉しかった。
僕のことはもう覚えてない。
いや、断片的な記憶はある。
なんか言うたびに
「もうあかん。
おじいちゃんに
迎えに来てほしい」
とか
「パッパラパーに
なってしもたんよ」
とか、
ネガティブなこと言う。
きっと、寂しいんやろ。
「ひ孫を抱くまで
がんばるんよ。」
冗談っぽく言った僕に
ばあちゃんは笑って言った。
「ぽい、と落してしまうから
やめといたほうがいいわな。
ま、膝の上に
乗せてくれたら大丈夫やな。」
うんうん。
その気があるから
大丈夫そうだ。
「あと2つで、100なんよ」
「ほー、100。すごいね。」
他人事のように笑う。
元気があれば、
なんでもできる。
また、
大好きな
おばあちゃんに
会いにこよう。