夏。

浪人生津久井さんの車で地川と共に海へ。
26時出発で早朝6時に海岸着。
上着とズボンを脱ぎながら朝日の輝くオレンジ色の海へとダイブ。
ダイブ先にはデカいクラゲが漂っていて、慌てて岸に上がって来た津久井さんを見るとところどころみみず腫れになっている。
この海岸はヤバいと笑いながら移動。
次の海岸には8時着。
そこにはクラゲはおらず、とにかく泳ぎ、焼きそばを食い、そして泳ぐ。
浮き輪に浮くこと3時間。
日が暮れそうなので帰り支度。
帰りの高速の車中、体中がヒリヒリしてきた。痛い。
そういえば日焼け止め塗っていなかった。
後部座席では地川も津久井もすやすやと寝ていて殺意が沸いた。

アパートに戻ってシャワーを浴びると鋭い痛みが体中を刺し続け悶絶。
熱を測ると38度。
三日三晩寝込むことになった。


復活した後は坂本さんのバイトで新潟の夏祭り。
一泊二日。
初めての泊まりのバイトで、坂本さんと同室に泊まった。
その時初めて彼が酒を飲むところを見た。
風呂上りにアサヒスーパードライの500ml缶をぐいぐいと飲み干す姿を見て、「美味しそうだね」と言うと「お前も飲むか?」と返されたが、酒を飲む場所は好きだが酒自体の味はまだそんなに好きじゃなかったので遠慮した。

翌日、お祭り前にトイレがてら近くのパチンコ屋に偵察に行ってみると、小汚い店内には知らない台がたくさん設置されていた。

地域性なのか地元で一度も見たこともない台もあった。残念な事に時間が無かったので打つ事は出来ず、また今度来たいなと思ったが結局二度と訪れる事はなかった。

夕方からお祭りに入り、組み立てた屋台でお面を売っていた。
微妙に出来の悪いプラスティックのお面に良く800円も出せるもんだなと思いながら客を相手にしていたが、買う客買う客みんな幸せそうだった。
女児向けのセーラームーンや男児向けの仮面ライダーのお面は鉄板で、子供にせがまれると大人たちは大抵嫌と言えないのだ。
「これ買ったら他の〇〇はダメだよ?」と言われ、その場しのぎの相槌を打つ子供を見ているのは結構楽しかった。

隣の屋台は型抜き屋で、同じくらいの年の女の子が店番をしていた。
俺は子供の頃から型抜きが好きで、お祭りに行けばとにかく延々と型抜きをしていた。
型抜きは薄紙に包まれていて、箱の中に乱雑に放り込まれているうちの一つを選んで取り出す。
クジさながらのその包みの薄紙を剥がすとピンク色の砂糖菓子にうっすらとへこんだ線が描いてあって、その線の外側を全て削り取れれば抜いた絵柄によって報酬がもらえるのだ。
一番簡単なもので200円、難しくてレアなものになると2000円以上の報酬になる。
出ただけでも高額が貰える型も表には記載したあったが、もちろんその型を見たものは誰もいない。

横で興味深そうに眺めていたら「お兄さん、やる?」と声を掛けられたので、やるやる!とお面そっちのけで型を抜き始めた。
お面屋の主人不在が珍しかったのか、浴衣姿の中学生の女子三人組が絡んで来た。

「ねえねえおにーさん何してるの~お面は~?」
「お面買う?」
「いらな~い」
「いらないんかい」
「おにいさんどこの人?」
「隣の県だよ」
「えー!そうなんだ!」
「おにいさんの事、〇〇ちゃんが気になるんだって!」
「ちょっとやめてよ~」
女子中学生のノリに何か懐かしさを感じながら、〇〇ちゃんを見てみたら、かなり大人びて整った顔立ちをしていた。

「彼女いるんですか~?」
「あー、いないよ」
「うそだ~!」
「いや、本当に」
「えー、じゃあ、今度遊びに行っていいですか~?」
「いいよ」
「きゃー、〇〇ちゃん、良いって!!」


ま、どうせ来やしないだろう。

ほら、言いなよとか言いあいながら3人でわちゃわちゃしている。
平和だ。

「あの…、電話番号教えてもらっていいですか!?」
〇〇ちゃんが意を決して話しかけて来た。表情で真剣さは伝わる。
チョークで路面にさっと書いて、すぐ消す。
「やったあ!電話しますね!!」
「はいはい」

きゃあきゃあ言いながら、暗くなり始めた屋台の間を裸電球と提灯に照らされながら消えていった。
手元の500円報酬の型はすんでのところで細い部分が欠けてしまった。



新潟からの帰路は夜中となり、いきなり始まった嵐で前も見えないくらい荒れていた。
なんとか無事に地元に帰った翌日、久しぶりに第三を覗いてみると、CR黄門ちゃま2が設置されている。
1/3確変、2回ループ。
俗に言われるフルスペックCR機時代の始まりである。

店内は賑わっていたが打てそうな台は無く、どこか別の店にでも行こうかとミラに乗り込み、キーを捻ってエンジンを点火、ギアを1速に入れようとしたら入らない。2速も調子が悪い。仕方がなく3速発進でのそのそと走り出すと後方に違和感を感じた。

バックミラーを覗けば山火事のような白い煙がもくもくと視界を塞いでいる。

どうした?火事か?そんなわけはない。

 

猛烈な白煙を発しているのは俺のミラだったのだ。