幸いだったのは、この件に気が付いた時には新台としての価値が薄まっていたこと、客層の変わる夜からはそこそこ稼働があるという好条件が味方したことだ。
やり方は誰にも話さず、誰にも見られないように気を付けた。
タイミング悪く知り合いの暇な浪人生に見られた時は、冗談交じりに「真似したら殺すからね」と釘を刺した。
自分にとっては間違いなく自分が発見した攻略法であって、誰にも真似されたくなかった。
6月はあまり一台で抜き過ぎないように気を付け、裏側の客に気を配る事を徹底した。
クルーンで即落ちする台だけは避け、それ以外ならなんでも良かったが、店が出しても良いよと公認しているような釘があればそれを打った。
一日7万円程度と上限を決めていたこともあり、釘が良ければ普通に打っている時間が長くなってリスクも少なく済むからだ。
技術は進歩していき、最終的には第二関門のトラのタイミングが合っている時のみ叩く事で、狙えないベロのみが関門となった。
つまり、叩いた時は1/2でデジタルが回る。
クルーンに入った瞬間にトラのタイミングを見極め、ゾウが上がり切る直前に玉が落ちる様に調整した強さで台を奥に叩く。
4周以降の遠心力が弱まって来た時、かつ手前側に玉が通過する瞬間に叩くのが肝で、遠心力が弱ければ弱いほど叩く強さは軽くて済む。
当然気づかれにくくなるのだ。
慣れてくると全ての予測が出来る様になり、クルーンに入った瞬間に叩くタイミングと強さが分かった。
こうなるともう無敵だ。
結果、16日間100時間程度で110万円を手にした。
時給にして1万円以上、2.5円交換の単純な出玉にして44万発である。
7月になり、次の入れ替えで外される事が確定した。
冒頭で釘を刺した浪人生が「無くなる前に一回やってみたい」というので、手順を教えた。
俺も調子に乗って「クルーン滞在を引き延ばす」叩き方などを披露して「秘技!」とかはしゃいで相当頭が悪かった。
あまりにもうるさかったのか、女子店員絡みで俺を目の敵にしていた若い店員にここぞとばかりにどやされ、浪人生は何万か勝ったところで身を引いた。
入れ替え前日はもうバレても構わないやと全力で朝から叩きまくり2時間で4万発出した。
一日で50万勝つことも可能だったが、そこまで金に興味が無かったし今後もあった。
もう思い残すことは無かった。
DOKIDOKI動物ランドは、平和直営店である第三と愛知県にあるどこかのホールにしか設置されなかったという希少台だ。
第三(ほか2つの直営店)はこういったテスト導入を行っていて、あまり外に出なかった台がいくつもある。
叩きがかなりの効力を持つことは、自分が実践していたことによりメーカー側も把握していたはずだ。
普通のホールならすぐに注意され出禁も当然なところだが、この特殊な環境も味方して自由に泳がされていたのだろう。
この台が世に放たれなかったのはメーカー側としては幸運だったと言わざるを得ない。
俺は世の中の全てが自分の都合の良い様に回っていると思い始めていた。
もちろんそんなわけは無い。
しっぺ返しはすぐに来るものなのだ。