夏。
教習所で知り合った同い年の紗夜、美紅と、やめた会社の同期である浩太を合わせた4人で飲みに行く事になり、何故かホストクラブに行く事になった。
あまり乗り気ではなかったのだが、支払いは私がするから!と紗夜に押されたのだ。
席に着くや否やホストが付いたが、別に面白い話をするでもなく、顔が特別良いわけでもなく、なんでこんなところに来たがるのか?と疑問しか浮かばない。
当然、ホストは男に対して接待しなかったので、居心地も良くはない。
余りにも暇だったので、カラオケ歌いますと選曲すると、店の中央のスポットライトに照らされているステージのような場所へ案内された。
曲はT-BOLANのJUST ILLUSIONである。
熱唱して満面の笑みで軽やかに席に戻る。
「どうだった?」
「マイク入ってなかったよ」
…マジホスト殺す。
本気で思った。
いい気分で坂を転がり、欲に任せて生きていくのは意外と簡単なGame of Loveなのである。
いや、マジでホスト許さん。
恥ずかしい気持ちもあって、もう帰ろうよと提案し店を出る。
会計は約束通り紗夜が払った。
かなり気分を害されていたのでもう解散しようと話したが、紗夜は家に遊びに来るんだと聞かない。
仕方なくじゃあ家に行こうかとタクシーに4人乗ってアパートに戻り、飲みなおすことにした。
深夜を廻り、浩太と美紅の二人は酔って寝てしまった。
二人が寝静まったのを確認したのか紗夜が耳元でささやく
「ねえ、セックスしよ?」
「え?なんでいきなり?」
「セックス好きだから」
「そう言われても責任取れないし」
「だいじょうぶだよ。他にもセフレいるし重く考えなくて」
「・・・」
「私上手だよ?ダメ?」
正直、全然タイプではないので、そんな気持ちはさらさらなかったのだが、断ることで逆に相手を傷つけるのか?と何だかんだ逡巡した末、
「じゃあ部屋移そ」
そうしてLDKを挟んだ和室に静かに移動した
物置となり雑然としていた和室の壁際に腰掛けながら少しずつ服を脱がして行く
「何人くらいとしたの?」
「ん-、30人くらい?」
「多すぎじゃない?」
「だって気持ちいいもん」
「そういうことじゃなくて…」
自身、初めてのビッチとの遭遇である。
この子が話を盛っている可能性ももちろんある。
全部脱がして改めて頭の先からつま先まで見てみるが、ごく普通。
何でこんな普通な子がビッチをしているのだろう?
「本当に良いの?付き合ったりしないよ?」
「良いの!あ、今日大丈夫だからゴム付けないでね」
「他の人ともそうなの?」
「みんなじゃないよ。lycoくんはいいの」
よくよく見ると、座っていた畳をもう濡らしていた。
当時エイズが話題になっていて本気で怖かったのだが、そこで理性が吹っ飛んだ。
「ねえ気持ちよかった?」
「うん。よかったよ」
「またしよ?」
「うん」
正直、最中に色々考えていたせいか、あまり集中できなかったが、この子はこれで承認欲求を満たしているのだろう。
それを否定することは野暮だと思った。
そしてまたすると口頭で言った以上、1回で終えては傷つけるのではないか?とか無駄に考え、その後3回ほど呼び出して場所を変え替え試してみた。
だが気持ちが入っていない子と体を重ねても虚しさの方が強く残ることに強く気付かせられるだけだった。
それ以降、彼女と連絡を取ることは無かった。
この夏に車を買ったのだが、とにかく貯金が無く当然ローンなど組めなかったので、坂本さんとマツダの整備工であるルマンに相談した。
「どうせぶつけるだろうから良い車買っても無駄。維持費もかかるし何でも良いだろ?」と、車検付きの中古ミラを18万円で探して来てくれた。
車に対して何の拘りもなかったので、ありがたく購入することにした。
これで移動範囲が広がると思うと、660cc、マニュアル4速のボロ車でも嬉しく思ったものだ。
ミラの資金は主に第三の麻雀物語2で捻出したが、別名麻雀物語2号とは呼ばなかった。
麻雀物語2は業界初フルカラー液晶の名機、麻雀物語の無制限スペックと呼ばれていたデジパチだ。
賞球7&15の麻雀物語と違う点は、賞球6&13で最大出玉が2000個弱となっていて、本家と比べるとボーダーが高く、辛めなだけに持ち球無制限で扱うところが多かった。
スペックとはあまり関係ないが、絵柄も筒子ではなく萬子となっていた。
ボーダーを2.5円一回交換で比較すると、
麻雀物語 :
連荘(23%)含めた平均出玉:約3200個≒8000円
245/8≒30.6(1Kあたり)
麻雀物語2:
連荘(23%)含めた平均出玉:約2500個≒6250円
245/6.25≒39.2(1Kあたり)
となる。
現在はほぼ等価、またはそれに近い換金率で無制限営業のホールが大多数だが、当時はラッキーナンバー制というルールが一般的だったため、差別化され「無制限機」と銘打たれていた。
ラッキーナンバー制を簡略化した例で説明すると
「3,5,7の絵柄で当たった場合は4,9で当たるまで持ち球交換不要」
こんな感じのルールである。
(3,5,7のみ持ち球交換不要で他全て交換も普通にあった)
このルールだと1/5でしか持ち球遊技とならないので、ブレ幅が多く、相当回らない限りデジパチは打てない状況だった。
もちろんこれは安定した収益にのみに着眼した視点であり、そんなの関係ない人の方が大多数だったため、必然的にデジパチは良く回る(店が回せる)状況ではあった。
ではこの「持ち球遊技」がどのくらい影響を与えるのか考えてみよう。
交換率2.5円は交換しなければ貸し玉と同等の4円の価値である。
麻雀物語2の平均出玉は前述通り2500個なので、2500x4≒10000円となる。
持ち球遊技が無限に出来る状態と仮定した場合のボーダーラインは245/10≒24.5回となる。
実際は持ち球となるまでに平均245回転回す必要があるため、4000円ほどマイナスとなる。
また、平均出玉は連荘を合わせているため、77%で1900個と考えると1900x4≒7600円の価値となるが、これでは186回転しか回せないので、連荘の発生するまでの平均を加味するとさらに約60回転x3回ほど不足し、さらに約180回転分を現金で回す必要がある。
24.5回の場合は7400円弱だ。
つまり、無制限のボーダーライン24.5で持ち球0から開始した場合は11400円マイナスとなるのだ。
では現金投資を加味したボーダーラインはいくつになるのか?
ボーダーライン+1と仮定すると、1回転あたりの価値は10.2玉として大当たり1回に対して剰余10回転分の102玉となる。
2.5円換算だと255円。持ち球遊技から一回当たり255円増える。この場合だと負債11400円をペイするのに初当たり44.7回必要となるので現実的ではない。
ボーダーライン+2と仮定した場合は剰余204玉で約22.35回。
ボーダーライン+3と仮定した場合は剰余306玉で約14.9回。
ボーダーライン+4と仮定した場合は剰余408玉で約11.2回。
ボーダーライン+5と仮定した場合は剰余510玉で約9回。
麻雀物語の一回転にかかる時間は忘れてしまったが、10秒と仮定すると一時間360回転で約1.5回の初当たりとなるため、+5の場合は6時間経過以降に510*1.5≒765玉/hの増加となる。
要は換金差の大きい無制限営業は長時間打たないと勝てないのだ。
このルールは暇人には大変有利なルールで、ほとんどの人があまり粘らず出玉を交換していく中で、朝から晩まで回すことで稼げた。
持ち球になったらとにかく時間の許す限り回した。
上記の例では+3~(28/1K)で実際のボーダーラインと説明しているのが、当時の第三では上記のような環境の中にあったため、33~/1K程度の設定にしてある台も珍しくなかった。
そして粘って箱を積むことでシマへの呼び込みにもなるので、ホールとの関係もWin-Winだった。
そう都合よく考えていた。
麻雀物語は脱衣麻雀をモチーフとしていたのか、大当たり後の液晶に全裸の女子と乳首が描画されているのが過激だと問題視されたため、2では規制されていたと思うが、やはり筒子より萬子の方が良い。もちろんダブルミーニングだ。