【ディスクレビュー♪9】

ACCEPT / Metal Heart

 

   (1) Metal Heart
   (2) Midnight Mover
   (3) Up to the Limit

   (4) Wrong Is Right

   (5) Screaming for a Love-Bite

   (6) Too High to Get It Right

   (7) Dogs on Leads

   (8) Teach Us to Survive

         (9) Living for Tonite

         (10) Bound to Fail

 

 

 

 

 

 

 

 

 SCORPIONSと共に、HELLOWEEN以前のジャーマンメタルシーンを牽引したACCEPTの6作目。このアルバムがリリースされたのは1985年。母国のみならず世界的にもある程度の地位を獲得していた頃の名盤。

 

 私のレビュー記事に何度も登場する師匠が、誰もが知っているクラシックの曲を導入していることに興奮した面持ちで勧めてくれた。LP盤を借りて、カセットテープに落として、正にテープが伸びるほど聴いたアルバム。

 当時はLPやCDを多く買う余裕がなかったので、師匠から借りたアルバム、その後隆盛したCDレンタル店で借りたアルバムを軒並みカセットテープ化していたものだ。30代ぐらいになると、MDが安価で流通するようになったので、無数にあったカセットテープのコレクションは、すべてMD化して劣化しないようにしたものだ。

 そして、案の定MDはオワコンとなり、結局私は当時のアルバムをCDで買い直したりしている。このアルバムもその中のひとつ。

 

 

 

 師匠の言った通り、(1)のイントロがチャイコフスキーの "スラブ行進曲" そのものだし、中間のギターソロパートではベートーベンの "エリーゼのために" がモチーフに使われていたりもする。だが、そのことを除けば、ミッドテンポで始まるやや掴みの悪いアルバムでもある。

 (4)は名曲 "Breaker"(3rd)、"Fast As a Shark"(4th)と同じ系列のスピードナンバーで、地響きコーラスがシンボリックとなる以前の往年のACCEPTフリークを納得させる隠れた名曲。この系統のスピードナンバーは、ウドの脱退と共にU.D.O.に持ち去られることになり、ACCEPT本隊はしばし迷走期に陥ったりもした。

 (5)はLAメタルチックなギターのリフがACCEPTにしては異質だが、メロディはいかにも欧州的で、キャッチーな代表曲。

 (9)はミッドテンポではあるが、地響きコーラス系とは少し違う憂いのあるメロディが印象的。どことなく同郷のSCORPIONS的雰囲気もある。

 非常にクセのあるしゃがれた声質のウドダークシュナイダー(Vo)を擁する時代のACCEPTの全盛期は、一般的には4th "Restless and Wild" ~6thである本作ということになるだろう。そして、その頃のACCEPTを象徴する類の楽曲と言えば、サビが野太い合唱で歌われる(1)(6)(7)(10)のようなミッドテンポの曲でもある。当時は「地響きコーラス」と称されていたりもした。つまり、このアルバムはACCEPTらしい曲が詰まっているからこそ、名盤と言われているわけである。

 

 

 このアルバムを初めて聴いた時から30年以上経っているが、いま改めて聴き返してみて気付くこともある。この30年の間にいろいろなバンドを聴いたり、ハマったり、ギターを弾き始めたりすると、新たな発見があったり、当時はピンとこなかった曲が好きになったりもする。

 ウルフホフマン(G)のスタイルが、リッチーブラックモアに非常に似ているということも、後になって思い始めたこと。音色こそまったく違っているものの、特にギターソロになるとリッチーブラックモアの指癖、タイム感を彷彿とさせるプレイが多く、ギターフリークを強く惹きつける魅力もまた、ACCEPTには備わっている。

 

 このアルバムが発表された頃、HELLOWEENがデビューし、HELLOWEEN型メタルは「ジャーマンメタル」というジャンルを確立させるほどのフォロワーを生んだ。その前に時代、ACCEPTのようなタイプは「パワーメタル」と呼ばれていた。NWOBHM以降のヘヴィメタルの中にあって、より攻撃だがスラッシュメタルとは違うアプローチで、メロディに舵を切っていたのがパワーメタルだった。メタルというジャンルがまだ細分化する以前、パワーメタルの代名詞としてシーンに君臨していたACCEPTのマストとして聴いておきたいアルバム。

 

 

 

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