【ディスクレビュー♪8】

DESTRUCTION / Release from Agony

 

   (1) Beyond Eternity
   (2) Release from Agony
   (3) Dissatisfied Existence

   (4) Sign og Fear

   (5) Unconscious Ruins

   (6) Incriminated

   (7) Our Oppression

   (8) Survive to Die

 

 

 

 

 

 

 

 

 80年代初頭、スラッシュメタルの草創期においてヨーロピアンスラッシュの中心的存在だったDESTRUCTIONが、1987年にリリースした3作目。

 

 

 前回は私が初めて買ったメタル系CDについて書いた。

 お目当てだったHELLOWEENの "Walls of Jericho" 、師匠に勧められたSTEELERの "Undercover Animal" 、そしてもう1枚がジャケ買いをしたDESTRUCTIONのこのアルバムだった。ジャケ買いとはいえ、某メタル雑誌で高評価を獲得していたこともあって、躊躇いはなかった。レジに持って行くにあたって、師匠にも意見を聞いてみたが、師匠はまだこのバンドのことをよく知らないようだった。数年後にスラッシャーになった師匠からは想像できないが、当時はLAメタルに傾倒していたので、DESTRUCTIONは守備範囲ではなかったのだった。

 

 

 スラッシュメタルについては、私も少しだけかじっていた。METALLICAの2ndや3rd、ANTHRAXの2nd、3rdは聴いていたし、好きな曲も結構あったりした。DESTRUCTIONもその類だと思っていたが、違っていた。

 (1)はクラシカルで荘厳なイントロダクションで期待は高まったが、続く(2)のあまりにも混沌とした音像は初めて体験するものだった。METALLICAやANTHRAXに比べると音質も格段に悪く、聴いていて気持ちのいい音楽ではなかった。

 DESTRUCTIONがMETALLICAやANTHRAXと違うのは、その特徴的なボーカルスタイルである。当時は "吐き捨て" スラッシュなどと形容されていたもので、ヨーロッパ界隈にこのスタイルのバンドが多かった。ボーカルのメロディは皆無。とはいえ、後のデスメタルのスタイルと比べると随分 "歌っている" わけだが。

 

 

 前回書いたSTEELERのアルバムは、ピンとこなかったものの元を取るつもりで何度も聴いたものだが、このアルバムはほとんど聴かなかった。ジャケ買いのリスクを早々に思い知ったわけなのだった。

 

 

 その後、師匠がスラッシャーになったことで、私もベイエリアや欧州のスラッシュメタルをたくさん聴くようになり、免疫が形成されていった。その頃になって気付いたことは、音質が悪いアルバムは大音量でヘッドフォンで聴くと、それなりに聴けるということだった。

 このアルバムも、数年後になってかなり聴いた。初めて聴いた時はぐちゃぐちゃにしか聞こえなかったが、聴き込んでみると、多彩なリズムチェンジや変拍子、ギターとベースのアンサンブル、ツインギターのハーモニーなど、緻密に構築されて疾走する知的な曲たちは、アメリカのバンドにはないものだった。シュミーアの吐き捨てボーカルも、楽器として捉えれば、それはそれでDESTRUCTIONの独自性を際立たせている唯一無二のものに聞えた。

 

 

 このアルバムから20年後の2007年、バンドは過去作品から選曲しリメイクベスト "Thrash Anthems" を発表したが、このアルバムからは(2)(5)が選ばれた。長いキャリアを積み、彼らを取り巻く環境は変わり、テクノロジーは進歩した。良い音質で録音され、サウンドメイクも今風となり、チューニングまでドロップしていた。シュミーアはより "歌える" ようになり、随分聴きやすくなった印象だった。だがしかし、このアルバムを始めて聴いたときに感じられていた混沌とした雰囲気は、まったく失われてしまっていた。

 どんなバンドにもあるリメイク作品の賛否だが、当時のDESTRUCTIONが醸し出していた混沌としたエネルギーに心酔した私には、少し寂しい再会となった。

 

 

 参考までに、こちらがそのリメイクベスト。

 

 

 

 

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