「家族承諾」脳死移植、3週間5例のハイペース

 改正臓器移植法の全面施行後、この3週間で5例の脳死臓器提供が相次いだ。日本臓器移植ネットワークは29日、蘇生(そせい)後脳症で関東甲信越地方の病院に入院していた40代男性が、改正法に基づき、脳死と判定されたと記者会見で発表した。


 本人の臓器提供の意思は不明で、家族が提供を承諾した。

 1997年の臓器移植法施行以来、今月は、月間の脳死提供例としては2009年1月の4例を上回って最多で、法改正による提供条件の緩和が影響している。

 法改正前の脳死臓器提供は、年平均10例足らず。今のペースが続けば、日本移植学会が試算した年間80例を超えそうだ。

 従来、腎臓と膵臓(すいぞう)は心停止後に家族の承諾で提供できた。心停止での提供は毎年100例前後。同学会は、法改正により、心停止での提供の一部が、脳死提供に移行するとみる。

 家族承諾例のうち、1例目は、本人の口頭での提供意思があったが、残りは本人の意思が不明。29日に発表があった4例目の場合、家族は「最近のニュースを見て、本人の意思表示がなくても家族の承諾で提供できることを知っていた」と話していたという。

 脳死臓器提供が続いたことについて、東京財団の●(ぬで)島次郎研究員は「改正法の趣旨が国民に受け入れられつつあるとは思うが、臓器提供は予測がつかないもの。長い目で見なければわからない」と話している。(●は木ヘンに「勝」)

(2010年8月29日19時46分 読売新聞)