改正臓器移植法、全面施行 米コロンビア大、中好文准教授に聞く

7月17日7時56分配信 産経新聞

 ■「脳死は人の死」世界の潮流

 移植法は改正施行されるが、子供を中心に、十分な数の臓器提供には到底至らないとする声は強い。米国など海外で移植を受ける動きも続きそうだ。これまで多くの日本人が移植を受けてきた、米・コロンビア大医学部で心臓移植の責任者である中好文(なか・よしふみ)同大准教授(50)に、海外から見る日本の現状を聞いた。(豊吉広英)

 中准教授がメスを振るうコロンビア大ニューヨーク・プレスビテリアン病院では「外国人の移植患者は全体の5%以内」とする米国の「5%ルール」に基づき、臓器移植でしか生きる望みがないとして、日本をはじめ各国から渡航してくる患者を受け入れてきた。「今後もその方針は変わらない」という。

 ただ、米国でも提供される臓器が足りない状況は同じ。「ルールに従っているのなら、医療を必要とする患者に国籍は関係ない」。中准教授は院内の反応をこう説明する一方で、「日本のあまりに少ない脳死移植に、私の周りのほぼすべての医療関係者が驚きを持っている」と付け加える。

 日本の改正法施行で中准教授が懸念しているのは、これまで渡航移植で救われてきた日本の患者が、依然国内で手術が受けられないまま、渡航移植に自粛ムードが高まり、助かるはずだった命が助からなくなることだ。

 「そういった悲劇を回避するためには結局、日本国内の脳死移植を地道に増やしていくことしかない」

 どうすれば増えるのか。中准教授は「米国同様、『脳死は人の死』であることのコンセンサスを日本の国内で広げていくことが重要だ」と指摘する。

 脳死判定についても、「日本では脳死に対して懐疑的な声があるが、日本の脳死判定基準は世界で最も厳しい。医療に百パーセント正しいというものはないが、他の国に比べても厳格に運用されていることを分かってもらいたい」と理解を求める。

 もちろん、しっかりした脳死の判断ができる医療施設や医師の増加にむけた努力も不可欠だ。

 「世界的なドナー不足の状態というのは、いわば移植医療が世界的に“確立された医療”になっているという証拠。脳死移植を特別なものと考えるのではなく、通常の医療になっていることに、日本はもっと向かい合うべきではないか」。中准教授はそう提言している。

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最終更新:7月17日8時29分

産経新聞

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