先日外来に来られた患者さんとの会話の中で考えさせられることがありました。




外来へは血圧が少し高い、ということで定期的に来られているのですが、女医希望とのことで数ヶ月前から私が診ることになりました。




ただ、すごく病気に対する恐怖心があって、いろんな病気を調べて自分がその病気なんじゃないかと心配されるのです。普段から、時間が許す限り説明するようにしていましたが、先日は後にほかの患者さんが待っていないこともあり、じっくり話してみようと診察室にお入れしました。




「1人暮らしで、夜、突然倒れてしまうんじゃないかと不安でたまらなくなる」




さらにお聞きしたところでは、数年前に病気で息子さんを亡くされた、とのこと。それから1人暮らしになり、不安が強くなったようです。




「やっと、最近息子の写真が見れるようになりました。でも、語りかけても返事をしてくれないので、なんで返事をしてくれないの?って大泣きしてしまうんです。」




医師というものは、どんな時も冷静に判断して、客観的に物事を洞察していなければなりません。


そのように、私も教育を受けてきましたが、わが子を失った悲しみ、苦しみがどれくらい大きいものかと、胸が熱くなってしまい、もらい泣きをしてしまいました。




彼女にどんなアドバイスもできないでいました。つらすぎる。時間が解決してくれる、なんてことはない。どんなに時間がたっても失った悲しみは消えるはずがない。




「息子さんの分まで元気で暮らさないとね。一緒に頑張りましょう」




とはいったものの、




彼女の心に届いたかどうかは分かりません。