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尚、20歳以下の未成年やこういった話が不快に感じられる方はご遠慮いただきますようよろしくお願いします。
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<一夜目 あらすじ>
<二夜目 あらすじ>
静けさと、底冷えのする源爺の寝室兼応接部屋。
ミホをソファーに座らせると
石油ストーブに火を入れました。
少しの間、沈黙が続く。
「寒むないですか?」
「・・・・・」
眼下にある、涙の跡と上目遣いが怒りとも哀しみとも感じます。
どこにでもいそうな、平凡な主婦。
こんな所にいることが違和感を感じるくらいです。
しかし、このミホという女性は実はハードSMの常連者。
下の毛は、脱毛されていて彫り物もされているらしい。
源爺がなぜ私に、こんな手だれなお客を持たせているのか疑問でした。
「・・・・・」
無言のまま、両手を組み、私に差し出しました。
「最後に、私を縛って堕ちる所まで堕として・・」
訴えるように、ポツリと言った。
エスエムに、染まっている女性の意識は
縛られ、罵倒されることが自分への最大の『関心』で
最大の『愛情表現』だと感じている傾向があります。
私は、差し出した両手を
上から押さえつけるように下に落した。
私は首を振り言う。
「ボクは、縛ることができません。あとは、源さんを頼ってください」
と少し、冷徹に言いました。
しかし、その冷たさが彼女に火をつけてしまったようです。
明らかに欲情の表情になってきたのがわかります。
私は、彼女の欲情に飲まれてしまいそうな気持ちと
このまま、受け入れたら一生付きまとわれそうな怖さで葛藤していました。
目の前にいる、夜叉は妖艶な光をはなっている。
「やっぱり、受け入れたらアカン。怖い」
そう素直に感じ、それがその時の答えでした。
ミホは、低いテーブルにひざをのせ、
身体を傾けながら、私の唇に迫ってきました。
「ひゃっ。アカン」
裏声で、意味のわからない声をあげ
ミホの顔を押さえつけました。
顔にある私の手をつかみ
身体をテーブルにのせ、その手を自分の胸にあてらいました。
「ほら、こんなになってるのん」
胸の先にある小さな塊が、かたく触れた。
なぜか、私の身体が反応している。
思いとは裏腹に。
「こういう人(女)らは、いつもこんな風に感じてたんか」
私は思った。
身体のなすがまま、ミホをおもいきり引き寄せ、
強く抱きしめました。
ミホの唇を奪った。
恐怖も、欲情も、同情も、すべての想いを込めて
骨が砕けるのではないか? というくらい、
ミホの身体を締めつけました。
おそらく、呼吸ができないのか呼吸を止めている。
そうなりながらもミホの舌は、
私の中に踏み込もうと蛇のようにうごめいている。
しかし、しっかりと噛みしめた歯は
舌の侵入を拒んだ。
時間としては短いかもしれない。
長い抱擁の末、お互い、力がつきた。
ミホは、唇をはずしこう言った。
「ぐはっ、ぜーぜーぜー」
「いたたっ、痛いなー」
「へたくそ! こんなんで、いつも偉そうに言うてたな」
「もう帰る! 荷物は今度取りにくるわ ほなな、ナルちゃん」
バタンと出口のドアをあけ、
振り返えりざまこう言った。
「今までありがとさん。女はやさしく抱きしめるもんやで、アホ」
部屋を出ていきました。
石油ストーブのやかんの音が、高く響いている。
なんとか危機は逃れたものの、後味の悪さだけが残った。
三夜目 その八 源語る へつづく。
<三夜目 その八 源語る>