箸休め それはスポットライトではない | Soulmate

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汝、愛されたければこそ、愛せよ。

$ソウルメイト



小説は小休止につき、ひとまず一服。


現在、仕事の相棒と

同じデザイン学校で友となり、

同じデザイン事務所で就職、

そして、ふたりで独立し、デザイン事務所を立ち上げて早や21年。


25歳という若さでの経営に携わることになった。

経営といっても、デザインの依頼をうけて締め切りに追われるという時間を経てきただけの話。


開業当時は、仕事の依頼もなく10畳のワンルームで床に寝転がり

電話が鳴るのをひたすら待っていた。


勤めていたデザイン事務所は、求人情報大手のR社の筆頭ブレーンだった。

独立に至る後半期は、R社に出向いて精力的に仕事をこなし

評価を受けていたため、独立後もR社と独自のブレーン契約を心待ちにしていた。

しかし、独立後のブレーン契約は数ヵ月後という暗黙の了解ということから

2ヶ月ほど待たされることになった。


契約後、ポツポツと顔見知りのR社のディレクターからの

仕事も増え、R社以外の仕事も増えていった。

いつの間にか、全国のR社ブレーンで一番の依頼と売り上げをたったふたりで達成。

競艇の総理大臣杯のポスターとCMイメージを獲得するなど

追い風の時期を迎えることができた。


やがて、21世紀を迎える頃から、

手動のアナログ作業からパソコンでのデジタル化へ移行していく。


分業だったアナログ時代とは違い、

デザイナーの仕事が占める範囲が広かっていく。


独学でパソコンやソフトのノウハウを覚えつつ、

平行して締め切りに追われる生活が続く。

休暇もなく、深夜や徹夜におよぶ過酷な状態。


しかし、デジタル化で便利になった分、制作費が激減してきた。

比例するように、世の中長いデフレと不景気になっていく。

給料はないという月が続くことも増えていき、

蓄えも減り、カードの使用範囲をいっぱい使ったり

ない頭を下げ、親戚から借り受けるなど

自転車操業の日々が続いた。


そういう生活も長くは続かない。

転げるように、落ちていった。


とどのつまりが、家族を失い、

生活レベルも最低限まで下がることになってしまう。


企画立て、紙媒体、WEB、イラストなど

通常のデザイナーにはできない技術とノウハウを持ちながら

使うステージがない。


夢であったあこがれの世界は、仕事道具となり、

スポンサーの意向にそった、妥協した創造。

本来もっているはずの、創作意欲もなくなってしまった。


何度も、別の仕事へ転向しようと考えたが

ふたりで築きあげた城で、いろんな意味で抜けるわけにはいかなかった。


袋小路。


思案を続けた。

落ちるだけ落ちてしまったが、不幸だろうか?

いや、生活は落ちたが暮らせないわけじゃない。

背負うものも少なくなり

時間もある。

タダでは転ばない。


今まで、溜めに溜めた力とノウハウを

仕事ではなく、自分を表現するために使ってみようと決意した。

攻めてみるのだ。


手始めは、連載中の小説。

他にも、大人用の絵本や子ども漫画ブログなど、いろいろな構想はある。

そう、創作意欲に燃えている。


転んで初心に戻ったのだ。



私の歌姫のひとり、故・浅川マキ嬢が唄う「それはスポットライトではない」という曲。

一度、スポットライトではない輝く光を取り戻そうという歌だ。

掛け合いでの、英語パートを担当するのが

若き日の、メリージェーン つのだ☆ひろ。

最近まで、黒人歌手かとばかり思っていたが、つのだ☆ひろと知って驚いた。

黒人ばりのファンキーな歌声と

ブルージーなギターが心酔わせる。


先行きの見えない世の中、落ち込んでばかりじゃいられない。

立ち上がれ、男達よ。

いや、女達も。

ふたたび、光を浴びるのだ。


「それはスポットライトではない」 浅川マキ




引き続き、小説「縛らず師」をご愛読ください。