高い空 …④ | ひとつ前のかどはさよならサヨナラ


通るぞ!

通るぞ!


後方からガラガラ声が近づいてきた


人並みをどかすかのように初老の男が
男の子の手を引き
歩いていた

男の子は
魚を見ることもなく、下を向いている

僕はなんとも
形容しがたい気持ちを抱く


胸に走る
この一抹の思いは何なのだろう…

でも
それが

寂しさ


呼ばれる種類の感情にとてもよく似ていると
思ったんだ


子供なのか
孫なのか
僕には知る由もないけど

ただ
初老の男も
手を引かれている男の子も

タイヘン

だなぁ…
って感じたんだ

その瞬間
しみじみとしてしまったせいだろうか
涙がこぼれた

ボロボロとかでなく
一雫といった方が正確なくらい
わずかな涙だったと思う


人生と呼ぶ
景色には

山があったり谷があったり
棘の原があったりするもので

いつもタイヘンなのかも知れない

ただタイヘンが避けられないものであるならば

せめて

寂しく

は、ない人生を送りたいと僕は
切に、自分に言い
水族館を出たんだ


ラストに続く→