通るぞ!
通るぞ!
後方からガラガラ声が近づいてきた
人並みをどかすかのように初老の男が
男の子の手を引き
歩いていた
男の子は
魚を見ることもなく、下を向いている
僕はなんとも
形容しがたい気持ちを抱く
胸に走る
この一抹の思いは何なのだろう…
でも
それが
寂しさ
と
呼ばれる種類の感情にとてもよく似ていると
思ったんだ
子供なのか
孫なのか
僕には知る由もないけど
ただ
初老の男も
手を引かれている男の子も
タイヘン
だなぁ…
って感じたんだ
その瞬間
しみじみとしてしまったせいだろうか
涙がこぼれた
ボロボロとかでなく
一雫といった方が正確なくらい
わずかな涙だったと思う
人生と呼ぶ
景色には
山があったり谷があったり
棘の原があったりするもので
いつもタイヘンなのかも知れない
ただタイヘンが避けられないものであるならば
せめて
寂しく
は、ない人生を送りたいと僕は
切に、自分に言い
水族館を出たんだ
ラストに続く→