僕は
誰もいない道場で弓をひいていた
この道場はある寺の一角にある
矢が疾らない…
放つ度に思った
いつも自由出勤ですね
後ろから
この寺の坊さんが、優しく声をかけてきた
悩む度に話し相手になってくれる人だった
僕に弓道を教えてくれた人でもある
僕は弓を下ろし、坊さんに聞いた
人の喜ばせ方が分からないんだ
教えてよ
坊さんは一瞬何かに気付くような顔を見せて
そうですか
喜ばせたい方がいるんですねと微笑えんだ
うん、笑わせたい…
僕は、弓の弦の張り確かめる様にを何度かひきながら呟いた
難問ですね
坊さんも呟いた
僕は矢を一本手に取ると
弦と交差させ一気に引き、放つ
矢は風と逆らう様に的に刺さる
僕は話を変える
最近、自分らしい
って言葉をよく耳にするんだ…自分らしさって何?
坊さんは黙って聞いている
僕らしさを考える時
悩む僕や、金の事ばかり考えてる僕がいるんだ
これが僕らしさ?なんて考えると嫌になるよ…
やっぱり坊さんは黙って聞いている
僕は続けた
ただ、こんな事考えたの初めてなんだ…
こんなきっかけをくれた相手に元気がないままだと困るんだ
続く