医者が必要な怪我をした時は寺に行く
夜中に転がり込もうと、血がシャツを汚していようと、たいてい手厚く面倒をみてくれた
その日も雨が降る真夜中、野良犬みたいに現れた僕に、初対面の坊さんは町医者と夜食を用意してくれた。
乱暴に茶漬けを掻き込む僕をなんだか優しそうな目をして見ていた。
そんな優しいそうな目を見るのが苦手だった。
上目遣いで見ながら、食事が終わったら出て行こうと思った。
今日この近くで人が亡くなりましたよ
お経をあげてきたんです。
ゆっくり、坊さんは話はじめた。
僕は黙って聞いていた。
ついこの間は近くで男の子が産まれましたよ
話を続ける坊さんに空いた茶碗を置きながら、言葉を返した
あいにく、知らない人間がどこでどうなろうと何も感じないすよ
知ってる人間であったって涙が出る事なんかないない
笑って答えた
正直ですね…人間正直が一番です
微笑みかえされた
私もね、葬式でお経をあげて何十年泣いた事がありません。
くそ坊主です
またニコニコ話された。
外はまだ雨が降っていた。
傘くれよ。あっ金は払うよ
靴をはきおわってからふりかえった。
濡れてかえりなさい
あの言葉は今でも覚えている
そのあと、また遊びにきなさい
と言われた言葉も耳に残っている
あの時、僕は返事をしないで外に出た。