これは20年ほど前のとある知り合いの話
同じ職場で
毎日忙しく遅くまで仕事
でも好きな仕事だから楽しい
そんな中
少し年下の既婚男性と恋に落ちた
こちらも既婚の女性
確かに仕事で遅くはなるけど
それもデートみたいなもので
だけどある夜
現場を押さえられる
きっとずっと張られていたのだろう
そのあと
既婚男性の家の家族会議に呼ばれた彼女
わたしはアナタを一生許さない
男性の奥さんにそう言われたそうだ
その奥様は
今でもその彼女の事を許せずに
過ごしているのだろうか
つけられた傷は癒えることなく
今でも彼女を
苦しめているのだろうか
一生恨まれるんだね 私は
彼女はそんな事を言っていたっけな
ふと自分を省みる
君の嫁さんは
今でも昨日のことのように
私と君が不倫していた事を
苦しんでいるのかもしれない
もう5年もたったけど
それは私の感覚で
君の嫁さんにしたら
まだ5年なのかもしれない
一度裏切られた心は
何もなかった頃のようにはきっとなれなくて
真っ白の心についた黒いシミは
広がり薄まっていっても
元通りの真っ白にはならない
そうやって苦しんでいるのだろうか
だけど
真っ白にならなくてもいいのではないのか
清濁を併せ呑んで
夫婦は積み重ねられるのではないか
君は確かに今でも
心のどこかで
私を思っているかもしれないが
選んでいるのは間違いなく嫁さんだ
汚れても傷んでも
毎日を刻む相手がそこにいるなら
真っ白じゃなくてもいいんじゃないか
とも思う
そもそも
真っ白なまま生きていけるほど
この世は甘くない
グレーに染まったその場所は
これから赤や黄や青も
混じっていくかもしれない
多色が混ざればどんどん
黒に近づいていく
でもそれは純粋な黒じゃない
色んな色が混ざった黒だ
それこそが夫婦の
家族の歴史なのではないか
だけれども
それも月日を重ねるうちに
少しずつ思い出や
優しさや
時間の流れのフィルターにこされて
夫婦というカタチの色は
最後にはまた真っ白になる気がする
なんとなく そう思う
人として欠けている私は
もうその形を手に入れられない
君の嫁さんが一生私を許せないように
私が真っ白なれる事も一生ないだろう
でもいいんだ
清濁併せ呑むのが人生ってもんだ
多色を混ぜ合わせた黒に近い
ごちゃ混ぜな私の人生の最後は
ただただ無に返る
無色透明になれればいいな
なんて
今日考えていた
私は今日も当たり前のように1人だ
君は
当たり前のように嫁さんといるのだろう
そんな当たり前の人生を
今日も感謝して生きている