『白いリボン』(ミヒャエル・ハネケ監督/2010ドイツ)

小さな村で、事件が起きる。誰かが仕掛けた針金によるドクターの落馬事故。小作人の妻の事故死。

誰が? なんのために?


でもそのうち、事件は忘れられる。日常。

そしてまた事件は起きる。子供のリンチ事件。


だんだん、気づきはじめる。「誰か」が異常なのではなく、この全体が異常なのではないか。この醜悪さはこの美しい村全体なのではないだろうか。

領主がことさらに事件のことを教会で話すこと、牧師の子供たちに父の牧師が純潔さの証として白いリボンを巻くことが、逆にそれを象徴しているように思えてくる。


語り手は転任してきた教師だが、彼が村の人間ではないことは意外に重要な事実だと思うし、やはり別の村から来た乳母の女性と結婚して村を離れるのも必然だっただろうと思うのだ。



最後、村がその雰囲気から脱するためには、第一次大戦が必要だった。そして、あの白いリボンを巻かれた「純潔」の子供たちは、のちのちナチスの信奉者になっていくのだ。キネ旬で監督が語っていたところによると。