演劇ユニットG.com『闘争か、逃走か。』(作・演出:三浦剛/シアタートラム)

シアタートラムネクストジェネレーション企画Vol.2の第二弾は、公演ごとにスタッフもキャストも集める異色の演劇ユニットG.com。特徴的な人たちによるSF風な話でした。小ネタが好きだったな。

ただ、誰かがしゃべっているとき、他の全員が黙って聞いているというのは、ちょっと不自然というか、「演劇的」すぎるかなと思いました。わざわざ正面向いてしゃべったりするとこもあったし。

主人公っぽい営業マンの役者さんは、サロンパスのCMで介の字貼りされる新郎の人でした。

-ネタバレがあります。

浄水器販売員の男が迷い込んだ村に、隕石が落ちる。隕石は「村」と「街」を遮断する。閉ざされた「村」は、何かの「圧力」によってすこしずつおかしくなっていく。そんななか女上司が現れるが、彼女も村人たちに同化してしまう。

「博士」と呼ばれる人物は、男を「勇者」と呼ぶ。
それに対する男の返答が、分かりやすい部分でのこの芝居の注目点で、「世界の滅亡なんていわれても、そんなの話が大きすぎて実感ないですし、僕は普通に朝起きて、ご飯食べて、好きな人と映画とか観て、それでなんか楽しいな、っていうそういう幸せがあればそれでいいんですよ。勝手に世界でもなんでも救ってください」

この言葉を聞いて、環境問題を思い出した。それこそ話が大きすぎるけれど、環境問題に限らず、僕らのすぐ近くでもそういうことってあるんじゃないかと思ったりもしたのだ。

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途中で「宇宙人」を見つけて倒せ、という気分に村が支配されるときがある。でもその根拠は「あいつら(小学生くらいの女の子)が空を飛んでいるのを見た」からという程度のことであり、それに「そうだ、確かにアノ子達はフェルマーの最終定理をいとも簡単に解いたじゃないか」とか、そういう都合の良い事実が重なる。

「でもなんで空を飛んだら宇宙人なの?」という素朴な疑問は、「外部人」の女上司が口にするまで誰からも放たれない。「宇宙人」は確たる根拠を有さないまま、確たる「事実」になりかかっていた。

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舞台の隅に張られるテントの演出が楽しい。

たくさん入って宴会をしているシーン(影絵のようになる)は、あとで思うとサザエさんのエンディングっぽい。

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「今週の宿題はフェルマーの最終定理の証明でした。ではできた人」
「はい」
「はい」

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「これは陰謀なんだ」
「誰の? 悪の組織とか?」
「まあそんなもんだよ」
「農協?」

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そんなことで、あら捜しはできそうな芝居でしたが、僕はその辺目をつぶれて面白かったです。