戦後短篇小説再発見〈8〉歴史の証言 (講談社文芸文庫)/著者不明

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「小説の瞬発力」について言及されている井口時男氏の解説が面白い。

ある事実を書くにあたって、その「意味」を考えてから書く、のではなく、意味を問う前に書く、あるいは書きながら問う、ということ。

そのため、そこに語られることは巨大な「歴史」の全貌には当然及ばないが、しかしその細部を綿密に描写できる。「意味」は不明でも、そのリアルは、読者に率直に迫る。

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十一編が収録されているが、富士正晴「帝国軍隊に於ける学習・序」、田中小実昌「岩塩の袋」が特に印象深かった。どちらも戦時下の軍隊を舞台に書かれた小説。