四十日と四十夜のメルヘン (新潮文庫)/青木 淳悟

¥420
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親戚が編集者の方から「いま本当に面白い」と聞いた、と聞いたので、僕はさっそく生協書籍部にて注文して受け取りました。今日一気に読みました。面白いです。

表題作と「クレーターのほとりで」の2編。

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最初に読んだとき、確実に「は?」と思うことは間違いない。気付いたら何かが違う。同じ日の日記を何度も付け直すという形式のうちに、こっそりと欺瞞が紛れ込んでいる。

そして、その違和感、わけのわからなさは、結末のなさから来ている(保坂和志の解説でやっと分かった)。「物語には必ずそこに向かって収斂していく結末があるはずだ」という先入観では、この小説は読めないだろう。

あるいは、この違和感、わけのわからなさは、物語を語る「視点」の不在から来ている。だいたいの物語においては、(ときに動いていくにしろ)「語り手」というものがいて、その視点から読めば物語の構造がつかめるようになっている。

ところが、この物語は、物語の中に物語が、さらにその中に物語があって、しかも互いが同じ大きさで僕らに迫る。メルヘンの中のメルヘンの中のメルヘンの世界。そして循環。

僕らはなぜか、「結末」を期待してたとえば小説を読み、映画を観る。しかし、現実、現在進行形には結末はない。結末があることが当たり前という優等生的思考に一撃は確実に与えられる。その結果がどうなるかは、僕の知らないことだ。