サンクチュアリはなんと、リノセントの中で(夕は置いといて)明確に次のアクションを見据えて作った最初の曲なのです。この曲ができた時、次のアルバムの1曲目はこの曲だろうと思っていました。そのくらい自分の中で手応えがあった。一番最初にできたのはサビの後半の「ああ~ああ~この手で~」の部分なんだけど、ここはちょっと小節の括りが独特で、8小節、6小節、8小節になっていて、マスター桜井からはスタジオで詰めてる時に「歌がないとワカンナイヨ!!」と言われていました。確かに歌がないとこんがらがっちゃう。この曲も敢えてそういう風にしようと思ったのではなく、気持ちの良い方に展開していったら自然とこうなってしまっていた。けども、自分の中では足しようも減らしようもなく、これで完璧だな~と思ったのでそのままにしました。ちょっと面白いし。その独特の小節の括りでドドドと後半畳み掛けるように展開していくコード進行が気に入っています。
キーをCで統一するならこの世のほとんどの楽曲はCとFとGが使われています。これらをスリーコードと呼んだりします。CとFとGだけで作られている楽曲も星の数ほどあるし、どんなに複雑な曲でも大体この3つのコードは使われています。これに加えてAm、Em、Dm、ちょっと小洒落てBとかG7とかGmとかG#dimとか無限大なんですけども、その中でもほぼC、 F、Gは登場します。曲を構成する土台みたいな3つの基本的なコード。その中でもGというコードはドミナント(属調)コードと呼ばれ、少し不思議なコードで、不安定な響きだと言われています。着地感がなく、次への展開を予感してしまう響きです。だから、例えばコタンのサビ前がGなように、サビ前の盛り上がるところで使われることが多いコードです。コタンなどは典型的で、F→Gときてサビ頭でCにいきます。F→GときてCにきてくれると非常に着地感があります。なのでサビ終わりとかもCで終わる曲が圧倒的に多いです。ただここでFというコードがありまして、これをサブドミナント(下属調)コードと呼ぶのですが、ちょっと不安定だけどGよりは不安定じゃない、みたいな。これはFを構成する和音(ファラド)の中にCのルート音のドが含まれるからなのでは?と思うんですが(Gはソシレなので着地感のあるドがない)なのでサビの頭や最後がFの曲もLUNKHEADに限らず非常に多い。リノセントで言えば繋ぐのサビ頭はまさにFだし、ふわりのサビ頭もF(キーがAなので厳密にはDですが。もっというとDM7ですが)です。Cよりも少し着地感がないんだけどその分余韻のあるアンニュイな響きに感じます。なので曲終わりがFの曲も多い。Cだと着地しすぎてちょっとダサイ!みたいな時にはFの出番です。音源には入っていない、ライブだと定番のインディゴ終わりのダカダン!ジャア~ン!!もFです。あれがFです。ハイライトとかもそう(あれはキーがDなのでGですが)もっと言うと俺はそこでFadd9にしがち。そしてそして戻ってドミナントのG、GはやっぱりFに比べても随分不安定な響きで展開の頭に出てくることはあんまりない。けどその独特の浮遊感で展開をつけるためにBメロなんかに使うことは結構ある。月光少年とか、光の街とか、LUNKHEADでも相当あると思います。イントロに使う、というケースも。灰空とか、はじまれもそうです。はじまれのイントロなんかG→F→G→Fなのでもうめっちゃふわんふわん。その後のAメロ頭がドカンとCなのでこれを踏まえて改めて聴いてもらうとAメロ頭の着地感を理論とか知らなくても感じてもらえるんじゃないかと思います。そんなGを、このサビ後半の「ああ~ああ~」のところは敢えて頭に持ってきています。
G→Am→F→C→G/B→Am→G→F→C→G/B→Am→G→F
いつかG始まりのメロディでデカい曲を作りたかったのですよね。前述したように、2回目のCまでは2小節でコードが展開していくのが、そこからは1小節になるのですごい畳み掛ける印象があると思います。「あなたをこの手で」の後の「抱きしめられたらそれ以上は何にもいらないのに」のところです。こことても気に入っていて、この曲はいい曲にしたいなあと思いながら丁寧に他の部分も作っていきました。全体の構成もかなり悩んだ。油断するとすぐ5分くらい超えちゃうので。曲は長ければ長いほどお得でいいっていう謎な持論の人もいますけども、基本的には1曲は4分くらいがベストだと思っています。なのでデモを作る時にもそこらへんを目安に全体の構成を考えていきます。当たり前だけど、短いから手抜き、長いから凝ってる、とか、そんなアホみたいなことは一切ありません。ただこれが面白いことに削っても削っても長くなっちゃう曲(みゆきとか、1A1Bサビ間奏、サビ、アウトロ)もあれば、足しても足しても短い曲(螺旋とか、イントロ1番2番ベースソロギターソロラスサビアウトロまで入れて3分ない)とかもある。不思議です。なのでサンクチュアリに関してはほとんど間奏がないんだけど、やっぱり俺としてはサビを堪能してほしい曲なのでいいバランスにできたなと思っています。これ以上あれこれやっちゃうとブレるし、むつごくなっちゃう。サビも前半と後半とあるので長いし。聴きごたえのある曲だと思います。
そこまでして結構こだわったサンクチュアリ、歌詞も原型は1年前にすでに書けてました。なのになぜ1曲目ではなく最後の曲になったのか??それは…下北沢ができてしまったからです!!(爆)でもまあ、この曲たちの中で最後を担えるのは俺としてはサンクチュアリしかなかったかな?と思うので必然と言えば必然ですが。山下君などは漠然と最後はコタンだろうと思っていたようです。そう言われればLUNKHEADあるあるアルバム最後のろい曲で終わりがち。コタンでもよかったんだけど、コタンて割とさっぱり終わるからやっぱサンクチュアリぐらいどしっとアウトロがある方がアルバムの最後っぽい。しかもさらにこれまたアウトロ最後のコードがG。アルバム一番最後をドミナントのGで終わるわけです。着地しね~。あれ?また1曲目から聴きたくなるなるリノセント??実はそんな仕掛けでもあったり。
歌詞の原型は1年前から書けてたのだけど、最終的には随分書き直しました。最後がサンクチュアリでよかったと思うのには理由があって、リノセントにはいろんなタイプの曲が収録されていますが、毎回アルバムを作るごとにそうなのですが、やはりこのアルバムにも一貫して漂う匂いのようなものがある。アルバムという作品を作る、という作業にも関係しているし、同時期に歌詞を書く上でタイプの違った曲でもその時の俺の世界観がどうしても反映されるということもあると思います。その中で、これは大体アルバムができた後に気づくのですが、リノセントというアルバムに漂う匂いとはずばり「人と会う」ということなのだなと思います。この数年間、本当に人と直に会うことが難しくなりました。そして、人と人との結びつきはSNSなど、言葉の比重が格段に上がった。言葉だけで人と繋がる。これはとても便利だけど、とても危ないな、と。俺も言葉では失敗ばかりしていますが、そんな俺でもなお、この数年間の世界の感じはとても億劫でしんどいものでした。会えて、触れたら、抱きしめられたら、本当にそれだけで言葉なんか要らないはずなのに。スパイス、ざわついて、いるなどはそのSNSの不穏な感じを蹴散らしたかった曲だし、繋ぐ、ナハトムジークはまさに会えることの喜びを歌った曲だし。そういう俺のその時のマインドを山下君は敏感に察知するので、もちろん彼の中での伝えたい思いも当然ある上で、スポットライトはやはり会えないけど確かにそこにいるあなたへ向けた言葉でした。そういった、「人と会う」ということがこのアルバムのテーマなんだと思います。そしてそれは、今までで一番ライブ映えするアルバムにしようというフィジカルなテーマにも繋がっているんだと。やっぱりライブで会いたい。ライブバンドですから。
夕陽の写真とか、あと、月の写真とかね、つい綺麗だと撮っちゃうけど、目で見たようには美しく撮れない。スマホだと。だからSNSにあげても、本当はこうじゃないんだけどなって思うんです。
すぐ隣にあなたがいて、一緒に見れたらいいのに。それでもなお、同じようには映っていないかもしれない。それでもいい。それでいい。同じ夕陽を見て、それが違うように映っていても、解り合えなくても解り合えないことを分かち合えればいい。そういう意味でもやはりこの曲はリノセントの着地点だったんだと思います(最後着地してないんですが)
あと、この曲は最近の中では珍しくめちゃくちゃギターを重ねています。多いところだと6本とか7本とか??散々ライブだなんだと今書いてきましたが、正直なところこの曲ライブどうする…?という部分も俺と山下君の中でありました。重ねすぎて、ライブどうする…??というより、ライブ~どぅするぅ~?どぉしょ~アハハハ笑みたいなテンションでしたが。ただこれも、盲滅法重ねた訳ではなく、明確にビジョンを立てて重ねていった結果なので、スタジオで合わせてみても、先日のもぎたてイベントで実際にステージで2本のギターで演奏しても音源に見劣りしない演奏ができたと思います。なのでその問題もクリア!!さらにこの曲、何と言っても千手観音マスター桜井ズンドコ祭エンドレス開催曲なのでそこも見どころ聴きどころ。1A後半から1サビ終わりまでなんと1分半ずーっとスネアオンリーで千手観音ズンドコ祭なので、これ、ライブでマスター桜井だけを見続けるのもひとつとても有意義な楽しみ方だと思います。雄一で有意義ってね。あ、スミマセン。。
サンクチュアリは聖域という意味だけど、なんというか、そんなに大それた意味はなく、やっぱり会えて触れられたら、そのゼロ距離こそが、言葉も距離もない世界こそが聖域なんじゃないかと思って最初つけたんだけど、ざわついて、いるのブログで書いた7文字問題が発生して一回この曲もタイトルを変えたのです。これでいこう!と。そしたらそれが全然ピンとこない。後日事務所に行った時に悟に、変えたタイトルがピンとこないと伝えると、悟も全然ピンとこないと。そこにやってきた山下君もやっぱりピンとこないと。こりゃもうサンクチュアリしかないやんと。
つい先日、あの変えたタイトルってなんだったっけ?という話になって、俺も悟も山下君もビビるほどにまったく思い出せなかった。一六タルトのCMの伊丹十三ばりになんやったっけねえ…と首を傾げていた。よっぽどピンとこなかったんだな!!
サンクチュアリでよかった~!!!

さあ!!ツアーが始まる!!