木曜日はサビがまず出来て
そこからリフを考えて
リフからAメロBメロと作っていった。
ディスコードなリフからのAメロは
最初、コード進行的になんだか明るすぎるかなあと思って
別のアプローチを探してみたりもしたんだけど
それ以上にしっくりくるものが浮かばなかったのと
昭和の歌謡曲って結構こういうアプローチが多いし
Bメロのリフを使った不穏な感じとの対比も面白くて
結局そのままにした。
サビも昭和歌謡曲的アンニュイ感が漂ってるし
結果Aメロが全体のダークな感じを逆に引き立ててて
ディスコードなリフ
なんか明るいAメロ
不穏なBメロ
アンニュイなサビ
が不思議とまとまって
全体のバランスがとても良くなった。
アレンジもそこまで難航しなかったかな?
曲がもうしっかりしてたので
割とすいすい進んだ気がする。
(忘れているだけかもしれない…)

どっちかというと歌詞に難儀していて
この曲は何を歌われたがっているんだ…
と、全然書けなかった。
全然書けなさすぎて
ある日の木曜日のアレンジを練っていたスタジオの終わりに
山下君と悟に
この曲のテーマなんかない…?
と聞くと
悟からは「恋愛」
山下君からは「のっぴきならない修羅場」
と返ってきた。
これ、だいぶ今までにもいろんなことで話してきたから
知ってる人も多いかもしれない話だけど
やっぱり曲の雰囲気で
二人は答えたんだと思うけど
恋愛、のっぴきならない修羅場
山下君に至っては
ただの修羅場じゃなく
のっぴきならない修羅場だから
これはもう相当な修羅場なわけで
のっぴきならない恋愛の修羅場か…
と思いながら家に帰った。
そしてパソコンに向かった。
のっぴきならない恋愛の修羅場…
頭に浮かぶのは
江國香織さんとか山本文緒さんとか
女性作家の小説だった。
昔江國香織さんをよく読んでた頃
好きだった人が
(空中線とか君とコスモスに出てくる人です)
江國香織さんが好きなら山本文緒さんも読んでみるといいよ
ってオススメしてくれて
そこから山本文緒さんの小説を読み漁った。
俺が女性の作家を読み漁ったのは
単純にわかる!!という共感じゃなく
女の人…恐ろしい…という
怖いもの見たさからだったからかもしれない。
すべてを捨ててでも泥沼の地獄まで離さない執念深さ
と思いきや
ふっと紙切れを破くようにあっさりと切り捨てる潔さ
どっちも恐ろしかった。
村上春樹や吉田修一や中島らもや
どんなに著名な作家でも
男の小説の中の、男の描く女は男の描く女でしかなかった。
女性の描く女の恐ろしさはそれはもうゾッとして
男ってのは結局全部自分が支配してるつもりで
女の手のひらの上で転がされているんだと思った。
だから女性作家の小説を読むのは
見てはいけないものを盗み見ているような気分になった。
そういうところから歌詞を書き始めると
これはもうすいすいと筆が進んだ。
山下君も悟もありがとうだよ。

木曜日の歌詞はちょっとエッチだけど
このエッチ感も
男性作家の小説と女性作家の小説とだと
全然違う気がして
男性作家の小説の性描写って
ねちっこいというか
そこで男は安心しきってるっていうか
女性の方もああ満たされてる~みたいな
ほんと、ただスケベというか
一方で女性作家の場合は
体は許しても心は許してない、っていうか
その行為自体には没頭してるんだけど
我を忘れるほど感じているんだけど
でもそれを別の自分が俯瞰で冷静に見ているみたいな。
男はその最中、寝首を掻かれるなんて露にも思わず
猿みたいに腰を振ってるけど
女の方は常に男の喉元に剃刀を立てながら
でもしっかり快楽には溺れてる、みたいな
そういう生々しい恐ろしさを感じて
支配してると思ってる男のバカさと
支配してると思わせてやってる女のしたたかさ
そういう感じがこの曲の歌詞のテーマでした。
ただの都合のいい女だと思ってたら
逆に飽きてあっさりと捨てられる男。

で、途中の

思い出を拾い集めて
綺麗なままでゴミに出す
滲んだ涙は誰のため
後ろの正面だあれ?

のところは
いつかブログかツイッターかで言った気がするけど
後ろの正面だあれ?
は誰もが知ってると思うけど
かごめかごめの歌詞で
で、つまりそういうことです。
ここは自分で書いてても
とても陰鬱な気持ちになった。
でも、のっぴきならない修羅場だから…
出来るだけ暗喩で書いたので
気づいた人は(特に男は)リリース当時はあんまりいなかったと思う。
女の人はわかったかもしれないけど。

雰囲気が急に変わるBメロの歌詞は
YとかGとかSとかOとかは
みんな分かったと思うけど俺らのイニシャルで
ちょっとした遊び心です。
なんでもよかったんだけどどうせならと思って。
惚れた腫れたの色恋沙汰で起こる事件のニュースがテレビで流れるたびに
頭の中お花畑だなあといつも思ってて
そういうのをこの曲の主人公に委ねました。
歌詞を書く時に山下君に
このBメロ、歌詞書くの難しそうやなあ…
って言われたけど
全体のイメージが固まったら割とすらっと書けました。
曲としてのこのBメロの立ち位置にうまくハマったと思う。
好きな人がいる日常とテレビの中の異常
でもそれは紙一重で
そのテレビの中の異常はこの日常の中で起こってて
そしてそれはいつでもひっくり返り得るっていう。

この曲も歌詞を随分みんなで揉んで
最初の仮タイトルは「ゴミの日」だったんだけど
それじゃあまりに節操ないということで悩んで
これも山下君が「木曜日」って言って
木曜日っていう言葉の半端なダルっとした響き
週の半ばにダルっと無感情にゴミを捨てるあの感じ
そしてダルっと日常が続いていく感じ
捨てたのはあなただけか、それだけじゃないのか
そういうのを想起させて
聖が「え…木曜日怖い…うわ…なんか怖い…」
と言ったのが決め手で
木曜日ってタイトルに決まりました。

なんでか、木曜日を好きという女性が多い。
ダントツで多いかもしれない。
そういうことなのかもしれない。
‎LUNKHEADの"木曜日"
‎曲・4:00分・2016年
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