いつか知らない誰かを愛してもは
サビがまず出来て
そのサビを3拍子にするか4拍子にするかで迷っていた。
3拍子の感じもいいし4拍子の感じも捨て難い…
うーん…どうしよう?
ってなって
うーん…両方採用しちゃえ!!
ということで
1番2番は3拍子で
間奏から4拍子になって
最後サビに展開していくっていう
変則的なパターンにしたんだけど
結果、それが良かったと思う。
アレンジの面でもとても遊び心があって。
で、サビがあって
AメロBメロと考えていったんだけど
これは自分でも感動するくらい綺麗な曲ができた。
特にBメロの展開は秀逸だと思う。
ただ、ここ、こぼれ話があって
デモの段階ではBメロのコードは
D/C→Bm7→D/A#→D/A
GM7/G#→GM7→A→F#
って流れで
前半はいわゆるDを基調とした分数コードで
Dが鳴っててルート音だけが移動していく感じで
スタジオでのアレンジもそのままで進んでたんだけど
レコーディング当日になって山下君が
D/C→Bm7→D/A#→D/A
のところの3つめのコード
D/A#じゃなくてA#dimの方がよくない?
と言い出して。
検証してみると確かにそっちの方がドラマチックだったので
じゃあそうしよう!となった。
けどもその時すでに悟のベース録りが始まってて
件の場所
悟は元のコード進行でフレーズを考えていたんだけど
コードがD/A#からA#dimに変わるということは
スケール自体が変わってしまうということなので
元のフレーズだとどうしても音が当たって濁ってしまう。
とても綺麗なフレーズだったのだけど
こればっかりはしょうがないので
そこ、当たっちゃうから逃げて
ってお願いしたら
昨日までこれで大丈夫だったんだけど?
と言われて
いや、そこコードが変わったので昨日までとは事情が変わりました。
みたいなちょっとピリッとした空気になって
そこで山下君は
いや、そこのベースラインは大丈夫なんじゃないかな?
と言い出した。
いやいやいや、あなたが言い出しっぺでしょうよ
せっかく変えるならそこはかっちりやろうぜ、と。
こういうことがたまにあってモヤっとするけど
山下君は基本的に悟に甘い。
で、結局悟が考えてきてくれたフレーズはおじゃんになって
ルート白玉作戦になった。
ただ和音が複雑なので
ベースが白玉なのはルートが強調されて
コード感がしっかり出て逆に良かったと思う。
ちなみに全音符のことを白玉って呼びます。

間奏も最初はもっと短かったんだけど
桜井さんが
こういう曲だからガッツリ間奏長くて
展開があってもいいんじゃない?とアイデア出してくれて
で、間奏の前半はドラムとベースだけなんだけど
他のところがトゥルペトゥルペしてる分
こういうところはゴリゴリルートで攻めていくの
逆にかっこいいんじゃない?と。
そういうわけで初期アートスクールのひなっちばりに
ゴリゴリとルートを弾く悟とバシバシビートを刻む桜井さん
目指せアートスクール感という謎コンセプトで
間奏のアレンジは進んでいった。
俺もコーラスをかけて
リッキーばりにコードをじゃかじゃか掻き鳴らしている。
間奏から4拍子にしたことで結果良かったと書いたけど
さらに間奏にスピード感をもたせたことと
4拍子にした分最後のサビが3拍子よりもゆったりとするので
さらに叙情的でエモくなった。
山下君のピロピロしたライトハンドのフレーズも超良い。

頭の俺が一人でコードを弾いてるところ
フリーテンポで弾いてみるとかいろいろ試して
最終的には
バンドインしてからのテンポの2下げにしたと思う。
バンドインと同じテンポだとちょっとせっかちで
フリーテンポだとちょっとバンドインから雰囲気が変わりすぎる。
2下げくらいで弾くと
印象はそれほど変わらずでもバンドインからのプッシュ感も出る。
みたいな。
で、一番最後のところはフリーテンポで録ったのかな?
なんかこの曲はすごいいろいろ凝ったなあ。

歌詞は、歌詞はなあ
あんまり説明するのも良くないな。と思ったので
せっかく歌詞なんだもの。
聴いてくれた人の解釈に委ねます。

ただ、この曲は
名前を呼ぶ
ということが自分にとってはとても大事なキーワードだと思う。

俺は生まれてこのかた
誰かに名前で呼ばれたことがほとんどなくて。
親からも家族からも友達からも
誰からも名前を呼ばれない。
俺が生まれてきた時、年子の姉が
よしたろう、と上手く言えずに
たあた、と呼んでたのがきっかけで
物心ついてからは家族からは
たあたと呼ばれていた。
けどまあ、40手前にもなって
たあたはねえかな、って感じもあるのだろうか
母からもたあたとは呼ばれなくなった。
父はたまに「よした」と呼ぶ。
去年死んだ母方のばあちゃんは死ぬまでたあたと呼んでた。
姉は未だにたあたと呼ぶ。

呼ばれない名前に意味なんかあるのかな?
と自分の名前を呪ったこともあった。
これは本当に
誰も名前で呼んでくれないって
誰か共感できるのかなあ?
そんな人います?
人生の中で俺を名前で呼んでくれた人
片手で足りるかもしれない。
ってことはないか…
でも両手では足ります。確実に。
あの人とあの人とあの人って
明確に名前を挙げられるくらい少ない。
本当に寂しいもんです。

あ、LOST IN TIMEの海北君のお母さんは会うと
のしたろうさん!って呼んでくれます。
(海北家の餅つきののし担当だから)
それでもめっちゃ嬉しいです。

なので
他の人にとっては当たり前のことかもしれないけど
俺の中では
飽くまで俺の中ではだけど
名前を呼ぶってのはめちゃくちゃ特別なことなんだよ
と思いながら歌詞を書いたふしはあります。


この曲は歌もめっちゃエモく録れた。
最後サビの声がかすれるところとか
自分で聴いてても切ない。
Aメロの柔らかい感じとかもすごく良い。
これはラブ・ソングの時に書いたけど
こういう風に歌えるようになったのは
完全に江口さんのおかげだと思う。
ありがたや~ありがたや~
‎LUNKHEADの"いつか知らない誰かを愛しても"
‎曲・5:25分・2016年
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