2014年、10NK YOU ALL LUNKHEAD’Sツアー
残り名古屋、大阪、高崎を残した状態で
機材車が事故った話を
僕たちには時間がないのブログで書いたけど
その時点でツアー後すぐに始まるレコーディングのための
最後の一曲がまるでできてなかった。
俺ら貧乏性なので
今までレコーディングが飛んだり押したりしたことが一度もない。
けども毎回
今度こそダメだ…今度こそ間に合わない…
と思う。
けど結局間に合ってしまう。
けどこの時ばかりは
今度こそダメだ…今度こそ間に合わない…
と思っていた。
そして何のアイデアも浮かばないまま
最後の名古屋、大阪、高崎のロードが始まってしまった。

名古屋が終わって大阪まで夜走り移動で
俺は機材車の中でウトウトしてた。
そしたら夢の中で
メロディが流れてきた。
それはラジオから聴こえてくるような
もしくはテープレコーダーで再生したような
ノイズがかって歪んだチープな音だったけど
主線に上ハモが乗って、さらに輪唱というか
追いかけてくるコーラスが入ってくる
とても綺麗なメロディだった。

お判りだと思うけど
それが玄関のサビメロだったというわけ。
夢で曲ができるなんて話
たまに聴いてたけど
そんなわけないやろ~と思っていたけど
本当に夢でできてしまった。
美しい話のように聞こえるけど
正直自分としては
夢の中でまで曲作ってるなんて
どこまで追い込まれてたんだろ…俺…
と思ってしまう。
あの時は、悟の体のことや
レコーディングのこと
機材車が廃車になるほどの事故にあった
精神的ショックや体の痛みや
ツアーを続行するにあたっての
ファンの賛否の意見
悟はもちろんのこと、他の全員もいろんなことで
精神的にも肉体的にも疲弊しきっていたと思う。

で次の日大阪が終わって夜走りで東京に戻ってきて
すぐにデモを作って送った。
メンバーの反応はとてもよくて
特に桜井さんがとても気に入ってくれた。
みんなが同じ方を向けると作業のスピードが格段に早い。
そして全員がこの曲はいい曲だ!となった時に起こる現象
生でそのまま召し上がれ!アレンジ。
俺は一曲通してほとんど同じアルペジオパターンで
(左手小指がずっと2弦3フレットを押さえ続けているので
むしろ辛い、むしろ修行)
山下君もほとんど付点八分のディレイ
桜井さんもやはりストイックに同じパターン
悟に至ってはまさかのほとんど8分でルート弾き
普通のベーシストだと当たり前なのかもしれないけど
悟がそれやると、頑張ったな~と関心してしまう。
そうやってみんなが一丸となってシンプルなアレンジにしていった結果
曲の良さや歌詞の仕掛けがとても全面に出たと思う。
そういう感じで
玄関のアレンジはサクサクサクッと進んでいった。
それに並行して歌詞も書けていった。
この曲はハモりありきの曲なので
歌詞もハモりありきで物語を描いていった。
こういうのも初めての試みだったかもしれない。

ライブでは上ハモは悟がやってて
追いかけるコーラスは山下君だけど
この頃はレコーディングは時短のために
ハモりも俺が全部やってしまっていた。
けどサビの

ただいま「おかえり」おやすみ「おはよう」
おかえり「ただいま」おはよう「おはよう」
おかえり「ただいま」おはよう「おはよう」
ただいま「おかえり」おやすみ「おはよう」

のところ
主線は「私」で
追いかけてくるコーラスは「あなた」
なのに、両方俺の声じゃおかしいなと思って
なのでここの「あなた」の部分だけは山下君に敢えて歌ってもらった。
他の部分の追いかけコーラスは俺が自分で歌っている。
この「あなた」の声は歌詞に表記されてない。
それはなぜかというと
本当はもう聴こえるはずのない声だから。

どれだけの人がそれに気づいたかわかんないけど
こういうのもまあ、大事なことだと思うのです。
そこに自分らなりのストーリーを込めるのもね。
ほとんど誰も気づかないとしても
自己満足でもね。

このドアはこんなにも大きな音をいつも立てていたのだろうか、なんて思った

って冒頭の歌詞が書けた時に
この曲の主人公にどういうことが起きて
今どういう状況で
どういう風な心情なのかを
このたった1行で全部説明できたと思って
ちょっと(いやかなり)自分でも鳥肌がたった。

続く!!
‎LUNKHEADの"玄関"
‎曲・5:03分・2015年
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