金色のナイフは
どこからできたんだっけ？
思い出せん。
リフかな？サビかな？
サビだな、多分。
デモの時点でほとんど原型はできてたけど
アレンジが各々かなりぶっ飛んだなあ。
特に山下君の飛び道具
どうなってんの？
と、日本中のLUNKHEAD好きバンドマンは思ったに違いない。
あれねえ、あれは、なんか踏んでる。
Aメロの俺と山下君ギターのアンサンブルがとても気にいってて
山下君は付点八分のディレイを
ディレイレベル高めフィードバックはゼロかな？
闇を暴けのリフ方式。
で、俺は4分のディレイをかけて付点四分でフレーズを弾いてる。
それがうまく噛み合ってひとつのフレーズになってる。
徳間の品川さんという偉い人がとても気に入って
品川さんはミュージシャンでもあり
プロデューサーもやってて
特に自分がベースを弾くので
ベースラインには特にうるさい。
しかも超メソッドタイプ
なので悟の完全感覚トゥルペトゥルペとは全然ソリが合わない。
経過音通りまくりは悟のスタイルとしてもう完全に確立してて
ハ長調だったらドレミファソラシドなので
レのシャープとかファのシャープとかは一応ルール上反則なわけです。
もちろんコード進行上そういう音が入ってくることはある。
でも全然そうじゃない時にこういうのが入ってくると
気持ち悪く感じる。
そこを気持ち悪く感じないくらいのスピード感とフレージングで
絶妙に経過音で変な音を入れてくる悟のベースは
唯一無二の毒っ気というか
最初ん？？と思っても気付いたらクセになっちゃう。
ライブで悟の前に陣取ってる人たちを
ファン同士でG田の森の住人と呼んでるらしいけど
G田の森の住人を見てると
ラーメン二郎に並んでる人たちを思い出す。
あー病みつきになっちゃったんだね、と。。
でも、この経過音で変なスケールアウトした音が入ってくるのが
全部ダメだったらジャズとか成り立たないのよね。
ジャズなんてスケールアウト大会みたいなもんだもんね。
で、その品川さんという人は
悟と真逆で超理論派なので
経過音とか音が当たるのとか大嫌いで
録り終わった金色のナイフを聞いて
なんと、ベースを録り直せ、と言ってきたのだった。
一部分だけだけど。
あそこがどうしても許せない、と。
そんなのもう録り終わってんだから
同じ音なんか二度と作れないし
そこだけ録り直したらおかしくなるって
それこそ何十年も音楽やってきてんなら
わかってんだろ
と、なぜだか悟ではなく俺が猛烈に怒った。
それを伝えにTAGO STUDIOまできた新井くんが
ちょっと泣きそうになるくらいにキレてしまった。
でも悟も負けず嫌いの頑固者なので
そう言われたらぐうの音もでないぐらいに録り直す、と。
逆に火がついちゃって
そういうことなら、と俺もディレクション側に回って録り直すことに。
1サビ終わりのリイントロの部分なんだけど
最後抜けるところが
フレーズを変えて山下君のリフとユニゾンぽくなってて
そこがどうもなんかギターリフと合わなくて
どうせ合わせるならさ
そこをさ、カチッとッタリラ～って1音1音発音よく弾いてほしいのよ
と伝えると
どうも運指の都合上どうしても無理らしく
（2フレットから17フレットくらいまで1音で一気に飛ぶので
どうしてもグリスアップしてンナァリラ～みたいになってしまうと）
でもどうせ直すなら完璧にしようよ、と。
100回弾けば1回ぐらいまぐれで成功するんじゃない？
と、さっきまで弾き直すことにあんなに反対してた俺が
手のひらを返したように鬼軍曹と化し
山下君は自然の摂理を無視した俺の無謀な要求に
「それ無理やろ～」と後ろでゲラゲラ笑っていた。
100回はいかなかったけど
20回くらいは弾き直してもらったかもしれない。
そして無事
合田悟は自然の摂理に打ち勝ち
完璧なフレージングで弾き切った。
1:50ぐらいのところ。
品川さんがなんでそこまでして弾き直せって言ったかというと
この曲をめちゃくちゃ気に入ってて
何かのタイアップに推そうと思っててくれたらしい。
結局ダメだったけど。
でも今聴き返すと
ここはセーフだったんや…って不思議に思うほど
悟のベースは反則スレスレ（というかアウト）のところを走りまくってる。
まあ俺らからすればいつも通りだけど。
歌詞は
これは俺の実体験じゃないけど
フィクション、というわけでもなく。
あんまり細かくは説明できないけど
どうしようもない人だと自分でもわかってるのに
止められない恋ってあるのだなあ
さっさと切り捨ててしまえばいいのに
そういうわけにいかないんだろうなあ
明るい未来がないのに
楽しかった過去に縛られて
しんどいだろうなあそういう恋は。
と、思うことがあって。
ある日の帰り道
月が細く光ってて
アラビアンナイトとかに出てきそうな
あの反り返った短剣
あれに見えて
とても正しいものに見えて
それで家に帰って歌詞を書いたっていう。
歌詞集だと
切り捨てるべきは過去か未来か僕かあなたか
でページが終わってて
それとも？
が次のページの頭にくるのが
なんか、意味深で好き。