幻灯は2013年の頭くらいに曲ができたのかな。
曲ができた時に、これはもう本当にすごい曲ができたと
LUNKHEADを代表するようなすごい曲になるなと思って。
コード進行としては割とシンプルなんだけど
それが逆に転調して曲がどんどん壮大になっていく感じとうまく合った。
メロディも頭のAメロとサビは実はほとんど同じメロディなんだけど
それを転調を使うことで全然違ったメロディに聴こえるっていう仕掛けを使ってる。
歌詞の強さもあると思うけど
ほとんど同じメロディなのに
AメロはちゃんとAメロっぽく狭く聴こえて
サビはちゃんとサビらしく開けて聴こえるから不思議。
アレンジもアイデアがどんどん溢れてきて逆に困った。
ギターは重ねすぎてどうなってるのかもうよくわからない。
この曲にも鉄琴が入っていて
それがパッドぽいギターフレーズと混ざって
とても心地よい浮遊感を出してる。
完全にシガーロス目指しました感がモロバレだあ。。
転調して曲が展開していく感じと
そこに乗る言葉、メロディ、音、全部がシンクロしていて
200曲近く作ってきた中で
自分の中で最も完璧に近い曲だと思ってる。

早稲田の理工写真部の仲間が自殺してしまって
しばらく経って少し落ち着いた、婚約者だった先輩から
みんなから集めたという彼女の写真がDROP BOXで送られてきて。
あいつが好きだったグリーンラベルでも飲みながら見てやってください、と。
普段飲まないグリーンラベルを飲みながら
(ちなみに桜井さんはグリーンラベルを愛飲してる)
その写真を開いた。
そこには本当にただの日常の彼女が写ってて
写真部のみんなが写ってて
酒飲んだりタバコ吸ったりご飯食べてたり
寝てたり馬鹿みたいなことしてたり
そして笑ってた。
理工写真部とまた別にある写団シャレードっていう写真サークルか
本部の写真部だったかな?どっちだったっけ?
そっちの人で、先輩が全部に所属しててそっちで知り合って
だから理工写真部にはたまに顔出すくらいだったと思うので
俺自身はそんなに仲よかったわけでもないし
卒業してからは一回も会ってない。
それでもその写真を見てたら
小動物みたいなあどけない顔で
スッパスッパ赤マルを吸っていたのを思い出した。
飄々とした子だった。
あまりにその写真の彼女や
周りの人たちが屈託無く笑っていて
その頃もきっと
毎日めんどくさいことやしんどいことや
退屈なことやつまらないことや
やりきれないことや不安や迷いや
いろんなことがあったんだろうけど
でもそんな当たり前の日々の中で
こうやってみんなで笑いあってたんだなと思ったら
涙がボロボロこぼれて止まらなかった。
さよならだけが人生だっていうけれど
本当に、生きていくということは
別れ続けていくということなんだろう。

その頃、子供を寝かす時に
世界中の名作が2~4ページぐらいにまとめられて
それが沢山入ってる絵本があって
そこから毎日いくつか読み聞かせしてたんだけど
その日子供が選んだお話が
宮沢賢治さんの雪渡りというお話で
その中に幻灯(幻燈)会という言葉が出てきて。
幻灯会っていうのはつまり
いわゆるスライドショーのことで
小学校とかで絶対あったやつ
OHPってやつ
今あんなどでかいやつないんかなあ。
教室真っ暗にしてスクリーンに映すやつ。
で、幻灯って言葉がさっきの写真とカキーンとリンクして
思わず鳥肌が立った。
こんなとこで答えが見つかってしまうとは
もうどこで何が起きるかわかったもんじゃない。
これはもう曲のテーマは幻灯しかないじゃないか、と。
ここまで来ると
もはや歌詞の95%は書けたも同然と言ってもいい。

大学時代は、実験やレポートや課題はめちゃくちゃ大変だったけど
でも理工写真部は本当に楽しかった。
毎日ハチャメチャで
本当に、まるで奇跡みたいな日々だった。
気づいたらこんなにも時間が経ってしまって
俺らはそれなりに大人になって
いろんなものを失くしたり手にしたりしてきたけど
でも、どれだけ時が過ぎても
それは「幻」の日々なんかじゃなく
確かにそこで僕らが生きた「灯」だったんだ。
‎LUNKHEADの"幻灯"
‎曲・5:22分・2013年
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