俺のクセなんだけど
どうも俺はハネたリズムが苦手で
ハネたギターを弾こうと思っても
気付いたら普通の8ビートになってしまう。
(逆にどんなに8ビートで弾こうと思っても気付いたらハネてるって人もいる)
なのでLUNKHEADはハネたリズムの曲がそれまで一曲もなかった。
とういうわけで
ここで一発、ハネたリズムの曲を作ってみようじゃないか!と
リズムありきで曲を作り始めていった。
作り始めていったんだけど
やっぱりメロディがハネられない…笑
でもまあリズムがハネてるだけでも
これはLUNKHEAD的にはかなり斬新なんじゃないか?
で、曲を作っていく中で
みんなにデモを送る前にすでに
自然と歌いたいことが浮かんできて。

明日死ぬぐらいの感じで、で書いた
旦那さんが自殺してしまった友達が
ある時ぽつりと

どんなに辛くても働かなきゃ生きていけないし
お腹も減るし
ずっと悲しんでいられたらいいけど
日々の暮らしの中で
ずっと悲しんでなんかいられない。
そしたらたまに
ふとした瞬間、彼のことを忘れてしまってる自分がいる。
そんな時に、自分はなんて薄情な人間なんだろうと思う。

って言った。
それに対して俺がかけられる言葉なんてひとつもなかったけど
でもそれは決して薄情なんかじゃないと思った。
大体にして彼女を残して勝手にいなくなってしまったのは彼の方なのだ。
なんで残された彼女だけが責任を背負い続けなきゃいけないのだろう。
せっかく生きていくんだから
楽しいことで笑って
美味しいものを食べて
幸せに向かって生きていくべきだと俺は思う。
傷を抱えたまま幸せに向かって生きるのは
悲しみの底で死んだように生きるより
遥かに残酷でしんどいことかもしれない。
でも生きていくってそういうことだと思う。
俺はその友達に
心の底から笑ってほしいし
美味しいものを食べて幸せになってほしい。
新しい恋をしてほしいしたくさん綺麗な景色を見てほしい。
それは彼を裏切ることなんかじゃないし
断じて薄情なんかじゃない。
と思いながら歌詞を書いた。

タイトルをはるなつあきふゆじゃなく
はるなつあきふゆはるにしたのは
季節の巡りを表現したかったから。
春が来て、夏が来て、秋が来て、冬が来て
そしてまた次の春が来る。
新しい春が来るたびにあの日が遠くなっていく。
少しずつでも
悲しみや虚しさが癒されていって
思い出に変わっていって
でもそれは忘れる訳じゃなくて
そういう風になってくれればと思って
ちょっと語呂が悪いんだけど
はるなつあきふゆはる
というタイトルにしました。

で、こういう歌詞なので
逆にウキウキした曲にしたかった。
ポジティブな方に向かっていきたかった。
なので敢えてメンバーには歌詞を見せなかった。
見せちゃうとやっぱり引っ張られちゃうから。
デモの段階でメンバーの反応はとてもよくて
スタジオでアレンジを練っている時もみんな楽しそうだった。
悟も桜井さんもノリノリで
リズム隊はやっぱりこういうリズム好きみたい。
だけども困ったことに
山下君までもがノリノリのウキウキで
サザエさんの挿入曲みたいな浮かれきったリフを楽しそうに弾いている。
これはどうしたものか。
いくらウキウキした曲といってもここまで浮かれポンチでは…
塩梅というものがある。
リズム隊にはウキウキしていてほしいけど
ギターには憂いを残したい。
なのでスタジオから帰ってきて、山下君にだけ歌詞を送った。
そしたら山下君は朝その歌詞を読んで
俺は何であんなに浮かれていたのか…と落ち込んだそうだ。
そして朝っぱらから一人公園に散歩に行って
公園のベンチで物思いに耽っていたらしい。
そ、そこまで凹まんでも…
歌詞知らんかったんだからさ…
山下君は歌詞を読んで
病気で亡くなってしまった愛猫のバズのことを思ったと。
それでできたのがあのちょっと切ないギターリフだった。

この曲はSE的に鉄琴が入っていて
曲中も間奏前やエンディングに少し鉄琴が入ってる。
この鉄琴なんだけど
メメントモリのレコーディング中に
音楽と人の金光さんが
撮影の小道具でヤフオクで買ったんだけど
結局使わなかったんだけど邪魔だし要らない?
と言ってきて
じゃあせっかくなのでってもらったやつで
なんかに使えないかな?ということで使ってみたんだけど
なかなかよかったんじゃないかと。
別に打ち込みでもいいんだけど
せっかくだから。
なので山下君がギターダビングしてる間
必死で練習してました…笑
着想が完全にB’zのいつかのメリークリスマスだなあ。
俺ら世代のバンドマンの血液には皆B’zが流れているのだ!
雑踏の音は俺んちの最寄り駅前で録ってみたらイマイチだったので
新宿駅の南口まで行って録り直しました。
録音機材は、またもやiPhoneです。
どこを見てもなにをしても溢れてくる思い出
でも生きていかなきゃいけない日常
みたいなのを表現できたらと思って。

歌詞は、曲先だとメロディの音数によって
文字数が限られてしまう。
なのでその限られた文字数の中で伝えたいことを表現するのは
普通に詩を書くよりもハードルが上がる、と思う。
普通に詩を書いたことが小学生以来ないのでわからんけど。

歌詞集を見直してみると
はるなつあきふゆはるは歌詞がとても短い。
こんなに短いんだ!?とびっくりした。
けれど、これ以上の言葉はひとつも要らないな
と思うくらい
伝えたいことがぴったりと収まってる歌詞だと思う。

メメントモリの取材で
ずっと応援してくれてるライターさんが
「今日は何か美味しいものを食べよう」
という歌詞が、このアルバムのすべてを表している。
と言ってくれて嬉しかった。
俺もそう思っていた。
生きること、いつか死ぬこと
大切な人の死を想うこと
それでも生きていくこと
悲しみや後悔を抱えて
それでもちゃんと生きていくということ
その全部が
「今日は何か美味しいものを食べよう」
という言葉に詰まっていると思う。