[vivo]は桜井さんがドラムになって初めて一緒に作るアルバムだったので
とにかく「舐められたくない」という思いがあった。
メンバーが変わって劣化したね~なんて絶対言わせない
みたいな気負いがあった。
その一方で
俺は子供が生まれて親父になって
世界の見え方がまるで変わってしまって
[vivo]を作っている時は特に
虐待やネグレクトのニュースが毎日ワイドショーを席巻していて
世に訴えたい、というよりもう吠え散らかしたいような
ドロドロとしたタールのような憎悪で漲っていた。
歌詞、曲、演奏、ありとあらゆる意味で
LUNKHEAD史上最も攻めていて尖ったアルバムだと思う。
これから先、どういうことを歌っていけばいいのかな?
みたいなことを20代は思っていたけど
この思いをぶちまけるのはこれっきりだろうな、と
[vivo]を作っている時は思っていた。
その先のことはわからないけど
それでも今俺から生まれるものはこれ以外ないから仕方がないな
と思っていた。

狂った朝は、ほとんど音源のイメージでデモができて
リズム隊はそこからすんげーめちゃくちゃやってますが
山下君はデモで俺が適当に弾いて入れた
スケールアウトしたフレーズにピンときたらしく
それを活かしてきた。
曲としてはとても清涼感があって
爽やかな曲だと思う。
構成としてもとてもシンプルで
敢えて凝ったところを挙げるなら
サビのコード進行が
Cadd9→D→Em→D→Cadd9→D→Em→D→
Cadd9→D→Em→D→Cadd9→D
なんだけど
最後サビの折り返しからはそのままCadd9→Dからスリップして
Em→D→Cadd9→D→Em→D→Cadd9→D
になっている。
だから
ずっと
Cadd9→D→Em→D→Cadd9→D→Em→D
の繰り返しなんだけど途中から頭が
Em→D→Cadd9にすり替わることで
より最後サビのヒリヒリ感が増してくる。

いつも歌詞が書けたらまずメンバーに見せるんだけど
[vivo]の曲に関しては
ほとんど最後までメンバーに見せなかった。
自分の中での歌詞のモードと
バンドのモードがだいぶ違ったので
俺のモードに引っ張られたくなかった。
こんな歌詞見せられたらどんよりしちゃうじゃない。
LUNKHEADのモードとしてはそこじゃないと思って
イケイケで行きたいと思って
だから敢えて歌詞を見せなかった。
(1サビ後のインターの部分、1:38あたりのベースの
トゥットゥットゥルットゥ~!!ってところ
歌詞の内容に比べて、余りに、オレ!悩み何もないっス!!ぐらいの
ゴキゲンなフレーズすぎて、壮がレコーディングの時に
これ浮かれすぎでしょ笑って爆笑していた。)

頭のピアノは俺の打ち込みです。
幼稚園の頃エレクトーンを習っていたのと
家で父親がいつもクラシックを聴いていたのと
姉がずっとピアノを習っていて
その練習を聴いていたのが相まってか
ろくに弾けないけど、音は頭の中で浮かぶのです。


神戸で子供が親にほったらかされて餓死した事件で
心がもう数え切れないほど千切れてミンチみたいになって
ずっと泣いていた。

そうしてしまった母親の気持ちが1ミリもわからない
ということはない。
親なんてみんな大なり小なり
ギリギリで子育てやってるんだから。
こいつさえいなければ、と思ったことが
一瞬足りともなかったか、と言われたら
言葉に詰まる。
だからこそ許せなかった。
わかってしまった自分も許せなかった。
許せなくて許せなくて歌詞にしてしまった。

それでも子供は大人を信じている。
子供にとって、親がこの世界のすべてだから。

トットで紹介した
トットちゃんとトットちゃんたちの中に出てくる言葉で
「子供は、大人を信じたまま黙って死んでいくんです」
という言葉が頭をよぎった。

どんな気持ちで生きたんだろう。
どんな気持ちで死んだのだろう。
最後に何を思ったのだろう。
何も考える気力すらなかったのだろうか。
それでも母親を信じていたのだろうか。
この世のすべてを呪っていたのだろうか。
幸せだった思い出をせめて抱きしめながら
目を閉じたのだろうか。

何をどんな風に考えても
本当に本当に地獄でしかない。