百人一首の中でも、個人的に大好きな歌の一つです。
人はいさ 心もしらず ふるさとは 花ぞ昔の 香ににほひける 紀貫之
とうとう出ました、紀貫之の歌が。
この歌、ちょっと洒落た感じがして、なんとなく好きなんです。
あと、梅の花を扱っているとことも好き。
ここでいう「花」は桜じゃなくて、梅なんです。だから「香ににほひける」と続くんですね。
「人はいさ」は、「人は、いさ」となり、人は、さあどうか、というような意味になります。
人の心はね、さあ、どうかわかりませんけど、昔なじみのこの地の梅の花だけは、私のことを変わらぬ香りで、美しく咲いて迎えてくれていますよ。
というような意味になります。![]()
実はこの歌には、結構しっかりした詞書が書かれていて、初瀬というところにお詣りに行くたびに泊まっていた人のところが、
何らかの事情でうまくなかったんでしょうね、その宿の主が「宿はちゃんとあるのに見限るなんてひどいじゃないですか」とすねて挨拶してきたので、
それに対してそこにあった梅の花を添えて詠んだという歌だとされています。
ちょっとしたトラブルなどがあっても、すぐに喧嘩になったりせず、こうした歌のやり取りでどこか穏やかにやり取りする様子が、ちょっといいなあと思いました。
「花ぞ昔の 香ににほひける」という下の句が、特に美しくていいなあと思います。![]()
さて、作者は紀貫之、言わずと知れた、歌の天才です。三十六歌仙の一人でもあり、古今集の撰者でもあります。
また、かな文字を使って書かれていることからも有名な、土佐日記の作者でもあります。
知性に溢れ、出世もそれなりにした人物ですが、どうも土佐守としての仕事は、良いばかりではなかったようです。
この地で末っ子が亡くなってしまったり…。
土佐日記は、そうした悲しい気持ちもつづられていることから、かな文字を使ったのかもしれませんね…。
歌の詞書にもある初瀬というのは、奈良県にあります。
この奈良の初瀬の長谷寺にいつもお詣りしていたんですね。ここは花のお寺としても有名なんだそうです。
貫之にちなんだ梅も植えられているとか…。
一度見てみたいと思います。
これは新潟の梅です…。(;^_^A
白山公園の梅林も、小さいながら満開になると結構綺麗です。![]()
