忘我の備忘録 ~夢野久作について~ | 諸々の昼休み

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眼の玉ばかりで
物を見ることはできない。
耳ばかりで音は聞こえない。
その背後(うしろ)には必ずや、
全身の細胞の
判断感覚がなければならぬ。

(夢野久作著、
「ドグラ・マグラ」より)


忘れないようにメモ。

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余談。
(以降、小説のネタバレ有り)


夢野久作の著作は
思いのほか音楽的だ。

文体にビート感があるし、
音楽自体への造詣も深い。

「ドグラ・マグラ」も相当に
音楽的な小説だが、
短編「あやかしの鼓」での
「能楽」に関する知識の深さが
また素晴らしかったりする。

鼓の呪いを浄化する下りで、
曲に「翁」を選ぶあたりが
実に秀逸なのだ。

「翁」は能楽に於いても
特殊な演目で、
演者は「神格」を纏う。

そして、
老境をむかえた者だけが
呪縛を解くことが出来るという終幕。

そんな滋味が、
「あやかしの鼓」には
あるのです。

実に素敵な小品。

私は一番好きですね。