Georgeは語る① | Lunasa

Lunasa

Lunasaとはゲール語で八月。
8月、獅子座生まれの
AslanのBlogです♪

黒く深き穴が目の前にあった。

 
穴の幅はそこまでは広くなく、私の身長よりは狭いのだと思う。
 
足を滑らせない様に気を付けながら、前屈みになって覗き込んでも底はまるで見えない。
 
 
やれやれ。
 
どうやら、これからこの中に、又一人で降りて行かなければならないらしい。
 
この穴は随分昔から、多分私が生まれる前から、そこに存在していたのだと思う。
 
以前、穴の中に降りて行った時は、白骨死体の様な瀕死の人物に遭遇し、彼の身の上話を聞く羽目になった。
 
姿なきガイドの声が、上から聴こえる。
 
何かその道を行くのに必要な道具があったら、持って行っても良いですよと。
 
え?今度は道具を持参して良いのか!
 
私はちょっと考えて、、、
 
 
そう!ロープと思った。
 
ロープを持って行く。
 
この真っ暗な闇の中で迷子にならない為、そして、又元の道を辿ってここに戻れる様に。
 
ロープ!それは良いですね、とガイド。
 
そして、私は真っ暗な穴の中にロープを垂らし、それを伝ってスルスルと深い闇の中へと降りて行った。
 
暫くすると地に足が着いた。
 
時間がかかると思いきや、案外呆気なく辿り着いた。
 
その先を奥へと更に進んで行く。
 
この先に小さな部屋があると、ガイドは言っていた。
 
やがて、ゴツゴツした岩だらけの炭鉱の様な洞穴の先に、朽ち果てそうな木の扉が見えた。
 
大きさは、さほど大きくはない。
 
大人が丁度、通り抜けれる位。
 
 
ガイドに促され、その扉を左手で開けて、中へと入ってみる。
 
その扉の向こうに拡がっていたのは、、、
 
 
湿気に満ちたカビ臭い闇の世界ではなく、光に満ちた春の世界!
 
春爛漫のその地には、オレンジや黄色や白の色とりどりの…これは、芥子?
 
そう、ポピーが咲き乱れていた。
 
 
辺りを見渡すと、遠くに雪がまだ残っている山々が連なっている。
 
私以外誰もいない、時が止まったかの様な穏やかな空間。
 
静かな花畑に佇んでいると、暫くして水のせせらぎが聴こえてきた。
 
小川が流れていますと、私はガイドに言った。
 
小川には水車が設けられ、小屋も建っていた。
 
 
どこかに落ち着きたいと歩いて行くと、一本の大木が見えた。
 
ここにしよう。
 
木の下には座り心地の良さそうな岩があり、その上に腰をおろす事にした。
 
そこでガイドに導かれ、小屋の中に意識を飛ばしてみる。
 
中には??
 
 
一人の質素な服を着た中肉中背で、光沢のない金髪の男がいた。
 
年の頃は、30代後半から40代前半?
 
その男は簡素なベッドの上に、両目を手で押さえて座りこんでいた。
 
彼が苦悩しているのは、その姿から一目瞭然だった。
 
彼の愛する娘の笑顔が頭に浮かび、続いて妻の顔も朧げに見えた。
 
 
やがて夜の帳が下り、漆黒の闇が森を包むと、小屋の窓からは夜空に輝く星の瞬きが見えた。
 
ぼんやり眺めていると、明日訪れるであろう処刑台が脳裏に浮かんできた。
 
私はいつの間にか、彼と一体になっていた。
 
明日、私(彼)は処刑されるのだろうか?
 
今まで黙っていたガイドが、彼の名前は?と尋ねてきた。
 
彼の名は…。
 
分からなかった。。。
 
 
では、彼が幼い頃に行ってみましょうと、ガイドは静かに言ったおすましペガサス
 
 
※画像お借りしました。