管理人室に行く前に、ポストに書いてある名前を探すことにした。それにしても、部屋の数が多い。エントランスがポストのせいでだだっ広く感じる。月白の名前を探さないで、数を数えていた。
「一階に15部屋で、16階まであるから・・・、240部屋か」
日照権(※)とかの事で訴えられないのかなぁ。ちょっとした郊外とはいえ都内の住宅地に聳え立つこのマンションは、明らか周りの一戸建ての日光を奪っている。
なんとなく日高の言ってたことを思い出した。そのとおりだとすると、月白は、最低239戸の別荘を持っている事になる(別荘って一戸二戸だよね?数え方)。ナ○お嬢様ですか。
ポストに名前はなかった。当初の予定通り、管理室に行こう。
「あの~、月白さんの部屋ってどこだかわかりますか?学校のプリントを持ってきたんですけど」
「学校の・・あ、亜矢音の部屋?一番上の右から3番目よ」
亜矢音の・・・部屋?
「あ、ありがとうございます。失礼しました」
亜矢音の部屋?もしかして・・・いや、違うよ。きっと下宿で一人暮らしでこの管理人さんととっても顔見知りなだけなんだ。無理やりそう解釈した。そうしないと本当に○ギお嬢様になっちゃうよ。
でも残念な事にこのマンションにはエレベーターがなかった。16階もあるのに、お年寄りとかはどうしてるんだろう。嫌がらせか?思わずそう思ってしまう。
「登頂~♪」と、目的も忘れるほど長い道のりだった。
右から3番目の部屋の呼び鈴の下にはちゃんと「月白亜矢音」って書いてあった。やっぱり一人暮らしだ。
「そういえばあいつって頭いいのかな。それならこの範囲表もいらないんじゃないかなぁ」
「要るわよ。さっさとよこしなさい」
「どわぁ!!!」
今の驚きは超びっくりなんてものじゃない。「ショック死ってこういうものなのねー」っていうレベルだ。
「な、なんで俺が来たってわかったんだよ!」
「そりゃお母さんから電話きたから。あんた管理室よったでしょ?」
「えっ・・・、あぁ。お前のお母さんマンションの管理会社の人なのか」
「そうじゃないわ。会社が経営してるんじゃなくて、このマンションはうちのものなの」
はいきましたー。「私はナギお○様です」宣言。あ、隠すところ間違えた。
これが漫画なら、俺の心内文のフキダシには「見せられないよ!」という看板をもった子が乗っかっている筈だ。
「あー。もういいや。びっくりするのには慣れました。これが範囲表です。どうぞ」
「ありがと」
「んー。じゃぁ俺はこれで」
「あっ。ちょっと待って」
「え?」
ここで何かお土産に手作りクッキーを、なんてありきたりの展開、望んでいませんから。
「えと、その・・・。せっ先生なんか言ってなかった?」
「うーん。お前には何も」
「違うの。城崎君によ」
城崎君?そんな呼び方だったっけ?
「んー・・・。あ、お前が俺に頼みごとあるって。それのこと?」
「うん・・。そうなんだけど・・・。」
まわりくどっ
「なんだよ?頼みごとって」
「・・・・・・」
「月白?」
「・・・・・・・・・・」
「おーい」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・帰るぞ?」
「あたし学校いけないのよ!」
「え?」
不登校宣言ですか?クラス委員が?
「今週仕事が忙しくなって、いけなくなったの。だから勉強が遅れちゃうから・・・」
「えっ、仕事って!学校サボってバイトなのか?」
「・・・・・・」
「そうなのか?」
「・・・・・・・・。株よ」
?
か、株って・・・。将来社長さんになるのですか?もし成功するなら雇ってください。お願いします。
ってまぁ俺はこいつの会社で働くより自分で経営したほうがいいな。
「それで、あたしがこのマンションを建てたのよ。ちょっと小さめだけどね」
嘘です。雇ってください。
「ほんとに小さいのよ?海外とかいけば、もうちょっと大きなのがあるわ」
亜矢音お嬢様ー!僕を執事にしてください!
ふぅ。
「で、なんだっけ、学校行けないから何?」
「・・・・・・ん・・・」
顔を赤くして、下を向かれた。
「なんだよ?」
「だから・・・・」
「わかんない」
そんなに恥ずかしいこと?青少年にはNG?
そんなこと思ってたのがバレたのか、月白は俺の顔面に正拳を繰り出しながら言った。
「勉強教えろーーーーーーーーー!!!!!!!!」
