「なぜ、勉強をしなければならないか・?そんな質問をされたら大人の敗北だ・・」みたいな意見を教育雑誌に村上龍が書いていて、ちょっと彼の作品を読んでみたくなった。
初めて村上龍を読んだのは高校生か・・もしかしたら中学生の頃だったかもしれない。「限りなく透明に近いブルー」題名が美しかったので読んだものの、当時の私には理解しがたく、黒人と日本人の女の子のセックスのシーンが強烈でそれだけが印象に残こり、何がいいたいのかもさっぱりわからなかった。大人になって手にとって見ても、汚くてどろどろしていて惨めで情けなくて悲しくて捨て鉢で・・という世界がなんだか救いが無いような気がして馴染めなかった。
なので、はじめての文学シリーズ」という中高生に向けて出版された中の村上龍読んでみた。すると、かけ離れたように思っていた彼の世界が少し近くなった。ちょっとおもしろかった。
「高校生の頃、フランスのジャン・ジュネという作家の作品に衝撃を受けた。ジャン・ジュネはホモ・セクシュアルで、私生児で、しかも泥棒だったが、翻訳を読んでも彼の小説は美しく、力に満ち溢れていた。わたしは、ホモセクシュアルや泥棒という小説の題材に惹かれたわけではない。どのような汚辱に満ちた世界を描いても作者に十分な動機と才能があれば小説は際限なく美しく強くなり、読むものに生きる勇気を与えるのだと知った」村上龍
はじめての文学の中に収められている短篇はあまりエキセントリックではなく、でも村上龍の色がちゃんと感じられて、いままでわからなかったことが少し分かった気がする。
ホームレス生活をしている人も、ラスベガスの億万長者も、夜に現れる幽霊におびえる小学生も、妄想ばかりをしゃべる老人も、学校へ行けない若者も、万引きばかりする主婦も、融通の利かない役所の職員も、みんな私自身とつながっているんだということを・・。
いくつかある短篇の中で「浦島太郎」が好き。難をいうなら本のデザインが、変。