jikoku


鉄道や時刻表にほとんど興味の無い私が、ページを前に後ろになんども繰りながら、地図をみながら読みました。


失礼かもしれないけど、意外にも・・・・とってもおもしろかった。


立派な仕事もあって、大切な家族もあるのに、何の因果か盲腸線とよばれる行き止まりのローカル線をのってまわる宮脇氏はおもしろい人だなぁと思う。乗り継ぎに一喜一憂し、時にはタクシーを飛ばし、時にはせっかくのっているのに居眠りをし、まさに東奔西走する姿が笑える。幸せな気持ちになる。


下記のグリーン車についてかいているところが特に好き。


「寝台はとれないし、夜行だからいくらかでも楽をしようとグリーン車にしたけれど、あれは私には扱いにくい。背もたれが傾くからそれだけ尻にかかる重みは分散するが、なまじ仰向け気味になるから足を伸ばしたくなる。すると必ず足がつかえる。床の上に足を投げ出せば背中がずり落ちてくる。思い切って前の席の背もたれの上にのせると楽らしいが、前に客がいなくてもそれはやりかねる。どうにも中途半端な構造である。いっそ背を立ててきちんと座り、”普通車よりいくらかは楽だぞ”と自分にいいきかせているほうがむしろ楽なのだが、高い特別料金を払ったのに施設を十分に活用しないのは存した気がしてくる。こうなると品性の問題になってきて、ますます扱いにくくなる。

   それにしても隣の窓際のおじさんは、発車ぎりぎりに上ので乗ってくると、ワンカップの日本酒をぐいとのみ、上着を掛け布団がわりにして惣ち眠ってしまった。疲れているのか旅慣れているのか知らないがよくもこんなに手際よく眠れるものだと感心した。

   しかも、このおじさんはグリーン車が良く似合っている。グリーン車は論ずるよりも似合うことが大切なのかもしれない。孝行息子でもいるのか、草履を脱いでグリーン車にちんまり座ったおばあさんなどもっともよく似合う。私などグリーン車に乗ると食堂車に席を移すのがもったないな気がするから、まだまだだ。」

時刻表2万キロより抜書き



これを読んでいると、毎日 理由や結果にふりまわされている自分がつまらないような気持ちになった。



全国のローカル線をのってまわるのだから、本の中には1つぐらい、自分の縁の深い路線がある。


私の場合は東羽衣線。小学校のころ、500円ほどのお小遣いを貰って、みんなでこの東羽衣線に乗って浜寺公園に遊びに行った。そこで、ゴーカートに乗り、缶けりをして、帰りにあつあつのコロッケを1個かって、食べながら歩いたあの日のことを、記憶のずっと奥のほうから湧いてでてきた。宮脇俊三さんにも一緒に食べてほしかった。宮脇俊三さんは大正15年生まれで2003年にお亡くなりになっているそうだ。ああ、うちの義父と同じ年代だなぁ・・と、彼が生きてきた決して平和といえない時代背景を思い浮かべた。