拙者は老女が好きでござる。年若い黄嘴のおなごよりも、人生の酸いも甘いも知り尽くした穏やかな気性の貴婦人が好きなのじゃ。


 しかし、拙者が老女を敬愛するのは、父の影響やもしれぬ。


 父は女は若ければ若いほどいいという考えの持ち主でござった。若ければ、細ければ、頭が良ければ、金持ちなら、なんでも良い、とにかく男の格は付き合っているおなごで決まるという考えじゃ。人間に値段がつくとあの男は本気で思っているのでござる。

 父は、がむしゃらに働いて財産を残した。拙者は長男ではなかったので相続はせなんだが、それも父の生き方かもしれぬ。


 しかし、拙者にとっては若すぎた付き合いにくい母よりも、穏やかな優しさを持つ祖母のほうがほっとする存在でござった。将来、祖母のような嫁さまをもらいたいと思ったのでござる。


 化粧を施した顔よりも、しわだらけの顔を好む。

 ステーキよりも芋の煮つけのほうが好きじゃ。


 おなごは、家具ではござらん。値段、値段という人間に限って自分に自信がないのでござるよ。嫁は頑丈だったら良いのではござらん。


 老女のはかなさを、拙者は愛してやまないのでござるよ。 

さて、初夏摘みの季節が始まったでござるよ。

初夏摘みとは「ファアスト・フラッシュ」とも呼ばれ、紅茶の原料であるツバキ科の茶葉が一番美味しく獲れる時期でござる。

拙者は、紅茶売り場に茶葉缶が増えるのを見るにつけ嬉しゅうてたまらん。

日本茶は加工する必要がないぶんもう少し早く、ついこの間ぐらいが新茶の時期でござった。今買っても美味いことは美味いが。


とりあえず、茶の知らせでござる。

 拙者、学生時代に占い師のバイトをしたことがござる。

 まったくもって突然、することになったのじゃ。

 占いなんぞ素人でござった。


「あー、占いっていうよりウチはカウンセリングがメインだから。悩み相談みたいな。じゃ、よろしく。」


 そう言われてトランプ・カードを一式渡され申した。拙者、全くもって何をしてよいやら分からぬ。


 一人目の客人は2人の女子高生だったでござる。


「金運を占って欲しいんですけど~。」


 拙者、カードの使い方も何も教わってはおらぬ。仕方なしにごそごそとカードをかき混ぜて


「金が欲しいならこんなところで無駄遣いするな。」


 と。そうしたら、クビになったでござる。


 あのあと、あの占い小屋には近寄ってもおらぬ。

 

 拙者は客商売には向いておらぬのじゃと思った。

 静かに、しかしそこはかと春は近づいてござる。

 我が家では雀が低く飛ぶ季節になり申した。

 何故、鳥が低く飛ぶかというとひとつには湿気が多いと羽が濡れるからでござる。

 しかし晴れ渡っている今日この頃、鳥たちが低く飛ぶのは拙者の父が鳥を可愛がってエサなどやるのですっかり人間に気を許しているからじゃ。

 それが良いことか悪いことか拙者には分からぬ。

 しかし、いつか自分の家が憩いの場になればと思うておる。

 家内が茶を淹れ、客人はくつろぎ、皆が談笑する、そんな家が欲しいのじゃ。


 貴殿のお家はどんな家でござるか?

拙者が知っている、この季節にぴったりのポエムを紹介するでござる。


「春夜喜雨」 by杜甫



好雨知時節

(よき雨は時節を知り)


当春乃発生

(春に当たりてすなわち発生)


随風潜入夜

(風にしたがいてひそかに夜に入り)


潤物細無声

(物を潤して細やかにして声無し)


野径雲倶黒

(やけい 雲はともに黒く)


江船火独明

(江船 火は独り明らかなり)


暁看紅湿処

(暁に紅の湿れるところをみれば)


花重錦官城

(花は錦官城に重からん)


 貴殿はどんな詩が好きでござるか?