拙者は老女が好きでござる。年若い黄嘴のおなごよりも、人生の酸いも甘いも知り尽くした穏やかな気性の貴婦人が好きなのじゃ。
しかし、拙者が老女を敬愛するのは、父の影響やもしれぬ。
父は女は若ければ若いほどいいという考えの持ち主でござった。若ければ、細ければ、頭が良ければ、金持ちなら、なんでも良い、とにかく男の格は付き合っているおなごで決まるという考えじゃ。人間に値段がつくとあの男は本気で思っているのでござる。
父は、がむしゃらに働いて財産を残した。拙者は長男ではなかったので相続はせなんだが、それも父の生き方かもしれぬ。
しかし、拙者にとっては若すぎた付き合いにくい母よりも、穏やかな優しさを持つ祖母のほうがほっとする存在でござった。将来、祖母のような嫁さまをもらいたいと思ったのでござる。
化粧を施した顔よりも、しわだらけの顔を好む。
ステーキよりも芋の煮つけのほうが好きじゃ。
おなごは、家具ではござらん。値段、値段という人間に限って自分に自信がないのでござるよ。嫁は頑丈だったら良いのではござらん。
老女のはかなさを、拙者は愛してやまないのでござるよ。