夫は若い頃、コカインに依存していた時期がありました。
結婚前にそのことを知っていたら、結婚することを迷ったと思います。
薬物依存も完治はなく、一生付き合っていかなければならない病だと知っていたから。
知った後も離婚を考えなかったのは、依存症という問題を軽視していたからかもしれません。
依存症になりやすい性質というのがあるのかどうか、私には分かりません。
恐らく夫に関しては、辛い状況や難しい問題に向き合うことが苦手で、
自分の弱い部分を認められず、アルコールや薬物で考えないようにしていたんだと思います。
コロナ禍になりすぐやっと見つけた仕事も失い、
厳しい外出禁止令が出ている中で、義父の最後を看取ることも、
葬式に出ることもできなかった夫は、精神的に大きなダメージを受けました。
もともと重度の不眠症に加え、義父の死が受け入れられず、
睡眠薬とアルコールと併用して酔いつぶれるようになりました。
ファミリードクターから睡眠薬を止められると、
今度は、以前処方されて手元にあった抗不安薬とアルコールでトリップするように。
ベンゾジアゼピン系の薬とアルコールの併用は、
コカインなどのドラッグと同じような高揚感を得られる場合があるそうです。
ベンゾジアゼピン系の睡眠薬や抗不安薬の処方薬依存という問題を知ったのは、この頃。
まさか、アルコール依存の治療をしている患者に、依存性のある薬が処方されるなんて
全く考えてもみなかった。。。
そうして、2年前の8月、夫は薬とアルコールを摂取した酩酊状態で自損事故を起こしました。
医者から自殺行為に値する数値だと言われたベンゾジアゼピン系薬剤は、
彼の医療履歴に「処方禁止薬剤」と登録されました。
医師の処方箋が必要な薬なので、私はすっかり安心しきっていました。
断酒に向け改善に向かっていた夫に異変を感じ、
だんだんと被害妄想、攻撃性も増してきたと思っていたある日、
再びソファーの下から、処方されないはずの抗不安薬を見つけました。
前回の警察沙汰は、ちょうどこの時期
再びベンゾジアゼピン系抗不安薬とアルコールを併用していた頃です。
ここ数年、処方薬依存の問題に取り組み始めたこの国では、
これまで普通に購入できていた様々な薬が、医師の処方箋なしでは購入できなくなっています。
しかしドラッグ同様、手に入れようと思ったらそんなに難しいことではないのでしょう。
現に、以前ニュース番組で
「ドラッグを買うお金のない未成年者は、睡眠薬やベンゾ系薬とアルコールを併用するケースが増えている」
と報道していました。
依存性が認められない限り、医師に相談すれば簡単に処方してくれる睡眠薬や抗不安薬、精神安定剤。
本人の薬でなくても、家族や友達の家族など探せば、手に入れるのは簡単でしょう。
お金がかからず、ドラッグと同じ感覚を得られるのなら、10代の若者が安易に手を出してしまうのも不思議ではありません。
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違法なドラッグだけではなく、アルコール、たばこ、ギャンブル、市販薬・・・
この世には、合法でも依存症になり得るものが溢れている。
でも、多くの人が 「依存症は自分には関係ない」という感覚を持っているのではないでしょうか。
夫がアルコール依存症と診断されるまで、私も例外ではありませんでした。
依存症を克服することの困難さ、本人と家族の苦しみが分かる今、
依存症の家族である私に何ができるでしょうか。
「依存症を軽視しないで。 少しでも問題を感知したら迷わず、1日も早く専門家に相談して欲しい。」
そう訴えることぐらいかもしれません。