初の中東国シリアに入って2日目、
国境の町で私たちが一目散に向かったところ、
それはアレッポのシンボル、アレッポ城でもなく、活気にぎわうスーク(市場)でもなく――
アラブ風呂、ハマム
なのであった。
トルコのハマムに入れなかったよーこちゃんは、とにかく1日123回は「ハマムハマム」と唱え、心一つにハマムに向かっていた。
昨年トルコのハマムでちょっとがっかりしていた私は、「とりあえずまた行っとくか」という気持ち。
そんなどちらも予想もしていなかった。
シリアのハマムで、これほどの目くるめく世界がくり広げられていようとは――。
親切なシリア人の案内で連れていたハマムでは、きれいな番台のおねぇさんと、黒スリップのさんすけさん(おばさん)が私たちを歓待してくれた。中は現地のお客でにぎわっている。
マッサージ、あかすり、洗髪、湯上りのお茶まで入ったフルコースに、フェイシャルもお願いする。これで総額600シリアポンド(約1200円)。
清潔なタオルにまかれて、洗い場につれてゆかれる。
ここまでは、トルコのハマムと同じだった。
そこから、突然異世界にワープするのである。
洗い場があくまでちょっと座っていると、突然、太鼓(ダルブッカ)の音が響きだした。
なんと、お客さんの一味が太鼓を持ち込んでいるのだ。
水着姿のオネーチャン、セクシー下着のオカーサン、スリップずり落ちオバーサン、タンクトップの子供たちまでみんな洗い場の中心に出てきて、腰をくねらせベリーダンスを踊りだす。
太鼓のリズムでズンズン、タクタクタク。
少女たちまで、やたらとセクシー。
おばちゃんの垂れきった乳がスリップからこぼれ落ちそうにバインバインとゆれる。
私も踊りの輪にひきずり込まれた。
もちろん、喜んで踊りだした。
ガツンと踊ってやりました。
地元の人々、大騒ぎ、そして大喜び。
私はたちまち、女たちの饗宴のアイドルに。
なんて楽しいんだ! なんて素晴らしいんだ!
アラブ風呂、万歳! ハマム、万歳!
こうしてひとしきり踊って汗を流した後、黒スリップのさんすけオバチャンに、洗い場に連れて行かれた。
床にゴロンと転がされ、まずは垢すり。
痛いと悲鳴を上げるが、おばちゃん、まったく容赦なし。
旅でたまった垢がこれでもかと出てくる。脱皮したかと思うほどだ。
次に、アレッポ名物オリーブ石鹸で、マッサージ。
ああ、これは気持ちがいい。天国だ。
うっとりしていると、よーこちゃんがみかんを口にいれてくれた。
なんと他のお客さんからの差し入れだ。
ここでは何でも持ち込んで楽しんでるらしい。
ゴロンと体を横たえて、体を揉み解してもらって、果物を口に運んでもらう。
素敵だ。 気分はお姫さま。
そして、私とよーこちゃん、ふたりともピカピカに洗い上げると、さんすけオバチャンが頬にチュッチュッとしてくれ、
「さぁ、とびこんでらっしゃい」
と浴槽の部屋に案内してくれた。
ここでも私たちは悲鳴を上げた。
喜びの悲鳴。
たっぷりと泳げるほどの広い浴槽、これはもうプールと呼んでいい。
「ハマム=蒸し風呂=浴槽は無い」
と信じ込んでいた私たちには、思いがけないプレゼントだ。
しぶきを上げてバチャバチャ泳ぐ。
ああ、気持ちいい。
もう一度叫ぼう。
ハマム万歳。
黒いチャドルに隠された、神秘の瞳のアラブ女、
その中身は、セクシー下着と陽気な笑顔。
実ははっちゃけアラブ女の宴の舞台
――それが、ハマムだ!


