姪や甥、友だちの子、離れて暮らす孫に絵本を贈るとき、注文の画面で肌の色を選ぶ欄に行き当たることがあります。色見本が横に並んでいて、記憶の中のあの子にいちばん近いものを一つ押す。本は包んだまま渡すので、絵を最初に見るのは受け取った側です。押した一つが絵のほうまで届いていたかどうかは、開けてもらうその場になって分かります。しかも、届いた一冊を開いたところで、まだ分かりません。わたしたちのところでは、用意した8段階のうち6段階が、ほとんど同じ絵になっていました。

先に書いておくと、これはわたしたちが自分たちのプロダクトで見つけた失敗の記録で、他社の製品を調べたものではありません。数えたところには、数えたと書きます。

一冊だけ見ているかぎり、この不具合は見つかりません

届いた本の絵はきちんと描けていて、どこがおかしいとも言えません。おかしいと言うためには、同じ設定のまま色だけを変えたもう一冊が要ります。その一冊は、贈った側にも、受け取った側にも、手元にありません。気づいたのは、8段階ぶんの主人公を一枚に並べたときでした。並べた人が最初に言ったのは「グラデーションが均等になっていない」ということで、指摘は正しく、実際の状態はもう少し悪いものでした。8枚のうち6枚が、ほぼ同じ薄さの子として出ていたのです。

注文画面のほうでは、8つともちゃんと違う色に見えます。見えているのは、色見本の四角のほうです。

絵本を8冊並べて見る人は、まずいません。

言い合う前に、明るさを数字で拾いました

主人公の条件をすべて固定して、8段階だけを動かして描き直し、顔のあたりの明るさを平均で取りました。数字が小さいほど濃い色です。

変更前 161 121 150 132 153 134 73 59

変更後 144 133 117 106 77 68 72 63

左端がいちばん薄い段階、右端がいちばん濃い段階

変更前の行を、画面に並んでいる色見本と同じ順に読んでみてください。2番目が121、5番目が153です。薄いはずの段階のほうが、暖かい段階よりも暗く出ています。そこから6段階ぶん上下したあと、7番目で一気に61下がります。濃さが本当に動いていたのは、この最後の落差のところだけでした。

この数字は火災報知器として置いてあります。顔のまわりに枠を取って明るさを拾うと、髪も影も一緒に入るからです。合否を最後に決めたのは並べた一枚の見え方のほうで、変更後は8人とも見分けがつきました。

原因は、色見本の下に書いた言葉にありました

入力画面の色見本には、それぞれ短い名前が添えてあります。日本語の画面では日本語のラベルが出ますが、絵を描く側に渡していた指示は英語で、そこに入っていたのは元の英語のラベルのほうでした。ivory / porcelain / cream / golden / honey / almond / mahogany / espresso です。指示を組み立てる関数が、選ばれた段階からこの名前をそのまま引いて、うしろに skin を足していました。画面のラベルと、機械への指定が、同じ一本の文字列だったということです。

この8語は、四角い色見本の下に置いたときに読みやすい、という理由で選んだ言葉でした。絵を描く側から見ると、ivory と porcelain と cream はほとんど同じ一語です。almond にいたっては英語では肌より目の形を指すことのほうが多く、色見本の上では中くらいの茶色にあたる6番目の段階から、白い子が返ってきていました。濃さをはっきり指しているのは最後の2つだけで、崖があったのもちょうどそこです。

人に読ませるために選んだ言葉と、機械に渡すために選んだ言葉は、聞き手も仕事も違います。一つの文字列に、両方の役目は持たせられません。

贈る前にできる確認

端の2段階を見ても、確認にはなりません。いちばん薄いのといちばん濃いのは、たいていどんな作りでも差が出ます。効いているかどうかが出るのは真ん中です。見本を出してもらえるなら、真ん中あたりの段階を二つ、隣り合わせに並べてもらってください。そのうえで、二つの違いを言葉にできるかどうかを見ます。言葉にできなければ、その二つは同じ指定として扱われている見込みがあります。わたしたちの場合、崖の手前の6段階がまさにそれでした。

聞くことは一つで足ります。真ん中の二つを並べて見せてください、とだけ伝えてください。

色見本の名前が食べ物や木からとられていること自体は、どこもおかしくありません。わたしたちのところで問題だったのは、その名前が絵の指示にそのまま流れていたことのほうでした。

直っていないところ

選ぶ画面に並んでいる色見本の絵は、古い言い方で描いたまま置いてあります。本のほうは描き分けられるようになったのに、画面の最初の6枚はいまも似たままです。

上の変更後の行にも、68の次が72という逆転が1か所残っています。枠の取り方から出る誤差の範囲ですが、ならして消したり、書くときに黙って落としたりはしていません。

贈る側にできるのは、結局のところ二つだけだと思います。渡す前に真ん中の段階を二つ並べて見せてもらうことと、渡したあとで、絵の中の子について何か一言が出るかどうかを聞いておくことです。似ているかどうかを最初に判定できるのは、その子を毎日見ている人だけです。

わたしたちは Lumora という絵本のサービスを運営していて、子どもの写真を一枚あずかり、その子を主人公にした物語を書いて絵をつけています。上に出てきた色見本も、注文のときに選んでもらう欄の一つです。よその家の子へのプレゼントにする、肌の色まで指定できる絵本を探してこのページに来たのなら、真ん中を二つ並べる確認は、わたしたちの本にも、いま候補にしているほかの本にも、同じように当ててみてください。ここに書けたことのほとんどは、うまくいかなかった自分たちの本を並べ直して分かったことです。