家で仕事をする様になった後、引退して主夫業へはいったじじいとしては、基本外に「出なければならない」仕事は一切ない。

 

食料品の買い出しだって、天気が悪ければ「や〜めた」と翌日にずらしてもいいし、妻に亭主関白を発揮して「帰りに買い物してこい」と(その実平身低頭しながら)お願いしても良いし、最近は近くに駐車場付きスーパーができた事もあり、雨の日でも車でいっちゃえば濡れずに買い物ができる。便利な世の中に感謝している。

 

そんな訳で、じつはじじいは雨の日に外に出る事は年に数回…片手で数えられるくらいしかない。さらにその大半が「出先で降られてしまった」とか医者など「予約があるから仕方なく」というもの。

 

通勤・通学をしている人は大変だよね。雨が降っても行かなきゃならないんだからさ。

 

そんなじじいだけれど、先日雨の日に出かけなければならなかった。

やはり約束していた事があったのでキャンセルできない用事だったのだ。

車で行けるなら困らないのだけれど、電車やバスを乗り継いでいく必要があった。

雨の日に公共交通機関に乗るのは本当に久しぶりだった。

時間帯はラッシュは終わったけれど、まだ少し混雑している時間帯。

ラッシュ時の様に有無を言わさず押し込まれて、身動きも取れないくらいギューギューというほどではないけれど、近くの人と少し触れ合う事もある程度には混雑していた。

雨の日にこれは結構辛いよね。特に毎日通勤などしている人には慣れた事かもしれないけれど、そんな習慣から離れて久しいお年寄りには特にね。

 

ある駅で人が降りて、それ以上に人が乗り込んできた。

それまでは結構余裕があったのだけれど、人と人の感覚が詰まってきた。

そして、じじいの前というか斜めというか兎に角前方にたった20代後半くらいの男性が仲間らしき男性と喋りながら吊り革につかまっていた。

その吊り革を掴む手の肘あたりに傘を引っ掛けてね。

 

折り畳みでない傘の柄は「J」の形をしているものが多い。

結構多くの人が、電車の中などでこれを無造作に何も考えず手に引っ掛けている事が多いと思うんだ。心当たりのある人も多かろう。

 

ここで問題

この「J」の形(手に引っ掛けて持つときは形が上下逆になるけれど)のどちらを腹側に、どちらを外側に向けて持つのが正解?

 

「どっちでもいいじゃん!」という答えが多いかもしれない。

でも、正解は柄の長い(傘本体に連結されている)方を外側に持つのが正解だとじじいは思っている。

 

なぜかというと、もし傘の形が「U」だったらその底部を手に引っ掛けたとしても、バランスよく真下に下がるだろう。しかし傘は「J」。となると、傘を手に引っ掛けた場合、重量バランスから、傘の石突き(傘の先端な)は「J」の短い方へ傾くんだ。

つまり柄の長い方を外側にして手に引っ掛ければ、石突きは自分の方向へ向く。

濡れた傘なら、その傘をつたって石突きから水が滴るがその落ちる場所を自分でコントロールできる。

翻って柄の短い方を外側にして持った場合、石突きは外を向く。そうすると、全く見も知らないたまたま隣にいるだけの人に向かって石突から放水攻撃を仕掛けることになる訳だ。

 

話を戻すが、その隣に来た20代と思しき男性は、柄の短い方を外側にして、友達と喋ることに夢中になっている。小綺麗な身なりをしていることから、もしかして柄を逆に持つと「自分に雨がかかちゃうじゃないか!」と敬遠しているのかもしれない。が、その結果として、じじいの足に結構な勢いで水が滴ってきた。

 

じじいは思わず傘を蹴ったよ。

男性はびっくりしていたけれど、「傘から水をかけられてびっくりしたのはこちらですよ」と言ったら怪訝そうな顔をしていたので、「そういうふうに傘を手にひっかけると、傘は外に向いて今回の様に意図せずとも他の人に水を引っ掛けるんですよ。トラブルを起こしたくなかったら逆に持った方がいいですよ」と言ったけど、どこまで理解したかな。「すみませーん(棒)」って感じで謝って他へ移動して行った。

 

「雨の日だから、多少水をかけられてもお互い様でしょ」という意見に同意しない事もない。けれど、少しの工夫…というか少しの思いやり…というかちょっと考えれば分かりそうなことを考えもしないか、自分にかかるのが嫌だからというだけで他の人のことを考えない人に対して、じじいは「お互い様」と苦労を共有する気持ちには慣れないんだよ。

 

中には傘のケースやビニール袋を用意して周りに迷惑をかけない様にする人もいるし、混雑する列車やバスの中でも、傘を自分の足の間に石突がくるようにして他人への迷惑を極力かけない様配慮する人が少なからずいる。本来はそういう人が大半だ!と言い切りたいのだけれど、残念ながらそう言い切る自信はない。

 

ほんの少し考えるだけで、お互いが不愉快にならずに済むのだから、ここを読んでくれてほんの少しでも共感できた人は実践してくれると嬉しいかな。

うん「じじいにいわれずともやっているよ」という人ばかりであるとは思うけどな。