妻がテレビを見ていた。
妻はハイエナ(廃線オタク)なので、鉄道の番組を「一体どこから探してきた?」「よくもまぁこんなに鉄道関連の番組がいっぱいあるよね!」と感心するくらいの量を見ている。
その中で、途中から見たので何の番組なのか、なんという番組なのかは全く分からなかったんだけれど、SL(蒸気機関車)の最後を描いた番組のようなものをやっていた。
それが「日本全国で」なのか「その地域で」なのか分からないけれど、番組の中では「1987年に最後のSLが引退した」と言っていた。
え?
1987年ってつい最近じゃん?
昭和62年だよね?
私のイメージだと、昭和50年前後には全く見なくなっていたように思っていた。
1987年って国鉄がJRに変わって民営化された年なんだね。
結構長くSLは活躍していたんだね。
そういう流れで思い出したんだけれど、ある時、私は東京から福島県の須賀川市に出張したんだ。
当時はダム建設用の制御システムを作っていたので、どこかのダム建設現場に立ち寄って、最終列車で須賀川駅に着いて改札に向かった。
私の前に1人歩いていた。
その人は改札を通る時、切符を改札の駅員に渡さず(当時は自動改札なんかないんだからね)、それを持って行こうとしていた。
駅員は「切符を渡してください」と言うのだけれど、その人は「この後も列車乗り継ぐかもしれないし…」と言う。
駅員が「今のが最終列車でもう列車ないし」と言っても、無言の抵抗をしている。
それをみて、駅員が「いいよいいよ。持って行きなよ」と言って通したようだ。
いったいなんなんだ?
で、私の番になったら、駅員が「あんたも切符持って帰っていいよ」と言う。私は「え?いいですよ」とお断りしたんだけれど、「まぁ記念に持って帰りなよ」と意味不明の事を言って受け取ろうとしなかったんだ。
後で知ったんだけれど、その日が国鉄最後の日で、明日から民営化となるって日だったんだ。だから、その切符は私の前を歩いていた人にとっては、国鉄最後の日の記念乗車券って事なんだろうね。
私も建設現場とか行く(けれど土木作業をするでもない)ので、背広ではない普通の服を着ていたのもあり、「仕事で出張してきました」ではなく「鉄道が好きでわざわざ休みを取って鉄道に乗っていた人」と思われたのかな。
同類に見られたくない!と憤慨するほどの事でもないし、折角気を遣ってくれているし、本当は鉄成分が全くない私としては、貰ってもほぼ意味を持たないのだけれど、断れもせず、捨てられもせず、どこかにしまい込んだ気がする。
あの切符、どこに行ったんだろうなぁ…すっかり忘れていた事なのに、その番組を見て、漠然とそんな事を思い出したよ。
ちょっとしたきっかけで、思い出が蘇るって事あるんだねぇ。